ニューヨークの不妊治療クリニックGFGの
アメリカ妊活便り
第9回 未来への備え 〜卵子凍結②
現在のキャリアも、子供のいる未来も、共に叶えるための女性の新しいライフプラン「卵子凍結」。近年では、女性のキャリア志向や晩婚化に伴い、加齢によって低下する女性の妊孕力を温存するための”社会的適用による卵子凍結”が働く女性のトレンドとなりつつある。
卵子凍結のプロセス
卵子凍結を行う際はまず、ホルモン値や卵巣機能、卵子数(AMH値)などを知るための血液検査や超音波検査を行う。その検査結果や年齢、個人の希望などを考慮した上で、個々に適した排卵誘発を行い、採卵。膣に挿入した超音波機器のモニターを見ながら卵巣内の卵胞に専用の細い針をさし、卵胞液ごと卵子を吸引・採取する。 採取した卵子は耐凍剤溶液に浸し、マイナス196℃の超低温で凍結。融解し子宮に移植する日まで、液体窒素タンクの中で保管される。凍結技術はここ数年で飛躍的に進歩し、凍結卵子の融解後の生存率はおよそ90%と言われている。未凍結卵子との妊娠率の差などを懸念する声もあるが、受精率や妊娠率、新生児リスクなど、その差はほとんどない。
最適なクリニックとは
卵子凍結を試みる際、現在の年齢や妊娠のタイミングなどある程度の計画性も必要だが、一番重要なのは「クリニック選び」。採卵技術の高さはもちろん、採取した卵子を適切に凍結保存でき、そして将来その卵子を利用し受精卵を培養できるラボを完備しているか。検査も含め数回の通院が必要となるため、通いやすいクリニックであるか。価格が適正であるか。相談しやすい信頼できる医師やスタッフがいるか。そして、卵子凍結や不妊治療の実績、実際に通った人の口コミも、クリニック選びの大きなポイントとなる。 価格については、初診料や各検査費は大半の保険でカバーされるだろう。しかし、社会的適応による卵子凍結は現在のところ保険適用の対象ではなく、排卵誘発〜採卵までの卵子凍結費に7,000〜9500ドル(別途薬代)、年間保管料約1,000ドル程度が目安となるだろう。
日米の卵子凍結事情
近年、日本でも卵子凍結を行う女性は増加傾向にある。だが、実際に凍結卵子を利用して妊娠を試みた人は約15%と、米国での約60%に比べ低水準。その背景には”選択的シングルマザー”という選択肢が、日本ではまだ許容されていない現状にある。 海外の精子バンクからドナー精子を購入することへの法規制は、今の日本にはない。ただ、日本産科婦人科学会の指針として、人工授精は不妊治療に対してのみ実施、第三者の精子提供を受けられるのは法的な夫婦のみと限定されている。 米国では、凍結卵子を利用しての妊娠や着床前検査(PGT-A)が当然の選択肢として目の前に並べられているが、日本ではそれらにおける制約など、加齢による女性の妊孕力低下や現代生殖医療に対する理解という点において、まだ多くの課題が残っている。
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