連載1094 1年後に迫った米大統領選:トランプ復権が“悪夢”となるこれだけの理由(中1)

連載1094 1年後に迫った米大統領選:トランプ復権が“悪夢”となるこれだけの理由(中1)

(この記事の初出は2023年9月19日)

 

バイデンが抱える2つの厄介の問題とは?

 民主党内の対抗馬より、バイデンが懸念しなければならないのは、本選で民主党票が第3政党に流れる可能性だろう。第3政党の「緑の党」(GPUS:Green Party of the United States)から立候補を表明した学者で社会活動家のコーネル・ウェスト(69)の評価は高い。「ウオールストリート・ジャーナル」の予測では、民主党票の数パーセントを奪うとされている。
 となると、バイデンは相手がトランプなら、敗れる可能性がある。
 さらに、バイデンには、次男のハンター・バイデンのスキャンダルという厄介な問題を抱えている。
 9月14日、デラウェア州の大陪審は、ついにハンター・バイデン(53)を3つの罪状で起訴した。2018年に銃を購入した際に薬物使用について虚偽申告した2件の罪と、違法薬物を使用しつつ銃を所持した罪だ。
 本選となれば、共和党はこの点を徹底的に突いてくるだろう。それでなくとも、なにかにつけて、共和党はハンター・バイデンのスキャンダルを攻撃している。

余裕で拘置所に出頭、テレビ討論会は欠席

 それでは、一方のトランプはどうなのだろうか?
 こちらは、驚くべきことに、強固な支持率を維持し続けいる。これまでにトランプは4つの事件で起訴され、合わせて91の罪に問われたが、支持率はびくともせず、逆にほかの共和党候補を引き離している。
 8月24日、トランプはジョージア州フルトン郡の拘置所に出頭し、逮捕された。その状況をメディアは逐一報道したが、トランプは顔写真を撮られたうえに、身長や体重を測定され、指紋の採取までされて、特定の番号を割り振られた。まさに、一般の刑事被告人そのものだったが、本人はまったく意に介さず、約20万ドル(約2900万円)を支払って保釈された。
 その後、アトランタ空港で、こう言い放った。 「(今日は)アメリカにとって悲しい日だ。私たちはなにも悪いことはしていない。〝不正な選挙”には異議を唱える権利がある」
 前日の23日、ウィスコンシン州ミルウォーキーで共和党の大統領候補者が一堂に会する最初のテレビ討論会が開催された。しかし、トランプは3日前に欠席すると宣言。同日、同じ時間帯に、FOXニュースの元看板キャスターのタッカー・カールソンのインタビュー映像を「X」(旧ツイッター)で公開した
 そのなかで、トランプは一連の起訴は「バイデン政権による権力乱用だ」と主張し、ほかの候補者を支持率で大幅にリードしていることを理由に「討論会には参加する意味がない」とまくし立てた。

2位に40ポイント差のダントツの支持率

 たしかにトランプが言うとおりで、テレビ討論会に出席した8人の候補者の支持率は、束になってもトランプに及ばない。
 討論会後に公表された「ロイター/イプソス」の世論調査では、トランプが52%で、2番手のフロリダ州知事で「ミニトランプ」と言われるロン・デサンティス(44)は13%に過ぎない。なんと、約40ポイントも離れている。
 ほかの候補者、元国連大使のニッキー・ヘイリー(51)、起業家ヴィヴェク・ラマスワミ(38)、元ニュージャージー州知事クリス・クリスティ(61)、前副大統領のマイク・ペンス(64)などは、みな1%から数%で、これでは泡沫候補である。
 この状況に、トランプの側近で、陣営の上級顧問を務めるジェイソン・ミラーは日本のNHKのインタビューに、「トランプ氏がバイデン大統領との政策の違いを話しているときに、舞台上でトランプ氏を狙い撃ちにする共和党のほかの候補者の支持率が1%程度というのはジョークのようだ」と語った。
 次回のテレビ討論会は、9月27日にカリフォルニアで開催される予定だが、トランプはまたしても欠席すると言われている。


(つづく)

この続きは10月12日(木)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。 

※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。

山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。

 

 

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