連載1098 1年後に迫った米大統領選:トランプ復権が“悪夢”となるこれだけの理由(完)

連載1098 1年後に迫った米大統領選:トランプ復権が“悪夢”となるこれだけの理由(完)

(この記事の初出は2023年9月19日)

 

間違いなく「パリ協定」から再離脱する

 トランプの大統領復帰が“悪夢”である極めつけは、彼が地球温暖化をいまも否定し続けていることだ。これほど、気候変動による大被害が出ていても、トランプは意に介していない。
 トランプは昔から、地球温暖化に対して「それはでっち上げだ」(It’s a hoax.)と言い、大統領になるや、本当に「パリ協定」(Paris Agreement)から離脱してしまった。
 誰もが耳を疑ったのは、地球温暖化に関して、トランプがこう言ったことだ。
「(それは)中国が自らのためにアメリカの産業の競争力をなくそうとつくったコンセプトだ」(The concept of global warning was created by and for Chinese in order to make U.S. manufacturing non-competitive.)
 これでは、大統領復帰となれば、再び「パリ協定」から離脱するのは間違いない。そうなれば、アメリカの共和党州は、GHG(Green House Gas:温室効果ガス)、すなわちCO2を出し放題になる。アメリカがやらないなら、中国もインドもカーボンニュートラルに真面目に取り組まなくなるだろう。
 となれば、「IPCC」(気候変動に関する政府間パネル合意)である「世界平均気温を産業革命の前と比べて1.5℃程度の気温上昇に抑える」は達成されない。すでに「WMO」(世界気象機関)は、66%の確率で2027年までに1.5度を超えるという警告を発している。
 トランプは人類を滅亡に導くのか? このままいけば、近い将来トランプタワーがあるマンハッタンは水没の危機にさらされる。

いまや誰もトランプの暴走を止められない

 それにしても、誰もこの“暴走老人”“止められないのだろうか? アメリカ大統領を選ぶのはアメリカ国民だから、他国の私たちがとやかく言う権利はない。しかし、世界に多大な影響力を持つだけに、アメリカ国民も自分たちだけの都合で大統領を選んでほしくない。
 どう見ても、トランプは2期目となれば、1期目以上に暴走するだろう。いまやトランプ側近には、民主国家としてのアメリカの価値観を持った人間はいない。連邦議会議事堂襲撃事件を見ればわかるように、誰もトランプを止められない。ペンス副大統領(当時)ですら、呆れたのだ。
 これまでの世論調査を見ると、アメリカ国民の多くは、バイデン、トランプのどちらも望んでいない。どちらがなってもアメリカにとってよくないという回答が、半数を超えている。
 いずれにせよ、来年早々始まる予備選からは、目が離せなくなった。


(つづく)

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山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。

 

 

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