連載1102 これでは日本は守れない!   防衛費増額の“支離滅裂”な使途(つかいみち)。 (中3)

連載1102 これでは日本は守れない!
  防衛費増額の“支離滅裂”な使途(つかいみち)。 (中3)

(この記事の初出は2023年9月26日)

三菱ミサイルは「低性能」「低信頼性」

 もういまさら述べるまでもないが、三菱重工に関しては、はたして最新のミサイルをつくる技術、ノウハウがあるのか疑わしい。
 三菱重工はこれまで、客船建造、旅客機開発、ロット開発と、“3連続失敗”を重ねてきた。しかも、今年、打ち上げに2度も失敗したH3型ロケットは、いまや時代遅れとなりつつある使い捨て型だ。
 このような三菱重工への懸念と、実戦配備までに時間がかかりすぎる点も考慮されて決まったのが、アメリカの巡航ミサイル「トマホーク」の購入だ。トマホークなら多少のプログラムの変更で、イージス艦のセル(発射管)にそのまま載せて使えるので、もっとも早く配備できるというのである。つまり、三菱重工ミサイルができるまでの“つなぎ”にしようというのだ。
 しかし、このトマホークにも懸念がある。すでに30年前の湾岸戦争時のミサイルであり、その破壊力に疑問があるということが一つ。もう一つは、スピードが遅いので、ウクライナ戦争でも使われている携帯式防空ミサイルシステム「スティンガー」で簡単に撃墜されるという点だ。
 とはいえ、トマホークでも三菱ミサイルよりはマシという見方が強い。となると、わざわざカネと時間を割いて国産ミサイルをつくる必要があるのだろうか。
 専門家に言わせると、12(ひと・に)式ミサイルは、「低性能」「低信頼性」であるという。現場は、みなそれを知って迷惑しているという。低性能、低信頼性のものはいくら改善しても限度がある。
 8月29日のワシントン発共同によると、アメリカ国務省は空対地の長距離巡航ミサイル「JASSM―ER」や関連装備の日本への売却を承認し、議会に28日通知した。
 このJASSM―ERは戦闘機搭載のスタンド・オフ・ミサイルで、売却額は約1億400万ドル(約154億円)。F15に搭載するとして、日本から最大50基の売却を求められたとしている。
 ということは、三菱ミサイルへのつなぎとして、日本はトマホークに加えてJASSM―ERも購入するとうことになる。そんなことなら、税金の無駄使いとしか思えない三菱ミサイルなど、はなから不要ではないだろうか。

なぜ、日本は国産兵器にこだわるのか?

 日本の兵器はみな時代遅れで、低性能なことは、軍事関係者なら常識だそうだ。しかも、高価格である。それなのに、政府は「メイドイン・ジャパン」にこだわり続け、海外に高性能で安価な兵器があっても買わない。買うのは、アメリカのものだけである。
 これは、軍事産業に対する保護策であるが、兵器が国内で供給できなければ本当の意味での国防ができないという、「大義明文」(もっともらしい理由)がある。
 しかし、それならなぜ、「高性能」「高信頼性」で「低価格」のものをつくって来なかったのだろうか。
 日本の軍事産業は政府の庇護の下にある「カルテル」であり、見事なまでに住み分けがなされている。たとえば、航空機に関して言えば、戦闘機は三菱重工、哨戒機は川崎重工、中型ヘリは富士重工、飛行艇は新明和ということになっている。日本の軍事産業が世界レベルから見て劣っているのは、国防族が言うように「憲法9条」や「武器輸出3原則」のせいではない。
 中国、北朝鮮は、日本の兵器の分析を徹底して行っている。その結果、いまでは、日本の兵器が自分たちのものよりはるかに劣っていること知って、せせら笑っているという。
 自衛隊員は命を賭けて、日本の防衛を担っている。彼らに、相手国より劣る兵器しか提供できない軍事産業は、むしろ「有害」である。


(つづく)

この続きは11月3日(金)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。 

※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。

山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。

 

 

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