連載1103 これでは日本は守れない!   防衛費増額の“支離滅裂”な使途(つかいみち)。 (下)

連載1103 これでは日本は守れない!
  防衛費増額の“支離滅裂”な使途(つかいみち)。 (下)

(この記事の初出は2023年9月26日)

日英伊3国共同開発の次期戦闘機は失敗作

 2022年12月、現在の主力戦闘機「F2」の後継となる「次期戦闘機」(FX)を、日本・英国・イタリアの3か国で共同開発するという「グローバル戦闘航空プログラム」(GCAP:Global Combat Air Programme)が、政府から華々しく発表された。
 しかし、これも成功はおぼつかないだろうという。
 まだ、各国がどのような分担になるかの具体的な枠組みは決まっていないが、GCAP参画企業は、日本が三菱重工、英国がBAE、イタリアがレオナルドなどになる。問題は、これらの企業のどこも、核心となる先端技術を持っていないことだ。
 次世代戦闘機(第6世代)という以上、世界でも最新鋭の戦闘機とされる「F35」や「F22」といった第5世代戦闘機を超える性能のものをつくらなければならないが、それができる保証はないというのだ。
 なんといっても、三菱重工には現代の戦闘機をつくる技術、ノウハウがない。かつて期待を集めた国産戦闘機「F2」は、「F16」のコピーで終わってしまった。しかも、性能が進化したわけでもないのに、価格は「F16」の3倍にもなった。
   英国のBAE、イタリアのレオナルドは、三菱重工に比べたらマシかもしれない。しかし、2流のものしかつくれないという。かつて英国、ドイツ(当時は西ドイツ)、スペイン、イタリアの4か国によって共同開発された「ユーロファイター タイフーン」は、性能で「F35」を超えてみせるとしたが、実際は「F35」に完敗した。そのため、BAEは「世界で2番目に強い戦闘機」と自称せざるをえなくなったという過去がある。
 こうして見れば、日英伊FXは失敗作になる可能性が高いのだ。

納期が遅れるうえ予算超過が見えている

 日英伊FXが、目論見通り次世代戦闘機としてふさわしい能力をもつ戦闘機として完成する。万が一そうなったとしても、問題はある。その一つは、納期の問題で、いつまでもダラダラと開発してはいられないということだ。
 欧州では、ドイツ、フランス、スペインが組んでGCAPのライバルとなる次世代戦闘機の共同開発「FCAS」を進めている。中国やロシアも第6世代戦闘機の国内開発に取り組んでいる。
 もちろんアメリカは、世界に先行して第 6 世代戦闘機開発の「NGAD:Next Generation Air Dominance」プログラムを進めており、その開発は順調だ。
 つまり、これらが先にできて配備されてしまえば、日英伊FXは旧式機になってしまうのである。
 さらにもう一つの大きな問題は、予算超過が見えているということだ。現時点での事業総額はざっと3.5兆円とされているが、実際には5兆円を超えるのは確実という。
 このことは、国産として製造された「F2」戦闘機や「P1」哨戒機、「C2」輸送機に先例がある。いずれも、当初予算をオーバーし、たとえば「C2」に関してはアメリカの「C17」輸送機より性能で劣るのに、1機あたりの価格は3倍にもなった。
「それなら、1機約100億円で買えるF35を、さらに100機買ったほうがマシではないか。合計1兆円で済む。なぜ、性能で他国のものにかないそうものない次期戦闘機に5兆円もつぎ込むのか。しかも英国、イタリアと組んで」という声があるが、これを表向きに言う関係者はいない。


(つづく)

この続きは11月6日(月)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。 

※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。

山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。

 

 

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