山火事で日本移民の息子犠牲に

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共同通信
米ハワイ州マウイ島ラハイナで取材に応じるワンダ・トキコ・キタグチさん=10月(共同)

 8月に起きた米ハワイ州マウイ島の山火事で、70年ほど前に宮城県から移住したワンダ・トキコ・キタグチさん(92)は三男を亡くした。「大事な息子が犠牲になった。言葉も見つからない」。長年暮らし思い出の詰まった家も失った。発生から今月8日で3カ月となるのを前に共同通信の取材に応じ「大事なものは何も残っていない」と苦しい胸の内を語った。

 死亡した三男はアルバート・ヒロシさん=当時(62)。キタグチさんは10年前に夫に先立たれ、アルバートさんと孫娘(41)と一緒に島西部ラハイナで暮らしていた。

 山火事が起きた夜は孫に起こされた。共に逃げようとアルバートさんにも声をかけたが「いざとなれば自転車で避難する。大丈夫」と聞き入れられなかった。尊敬する父親が残した家を守ろうとしていた。翌日アルバートさんを捜そうと訪れた自宅は焼け落ちていた。「悪夢だ」。翌々日も足を運んだが、焼けた臭いがきつくて長くいられなかった。火事発生から1週間過ぎて自宅付近で亡くなっていたと知らされた。「親切な子だった。悔しいという気持ちしかない」