連載1105 もはや地球温暖化は止められない。「気候オアシス」への「環境移住」が始まっている! (上)
(この記事の初出は2023年10月3日)
ようやく猛暑の夏は去り、秋がやってきたが、地球温暖化は止まらない。温暖化による気候変動は、むしろ、今後はさらに激しくなっていくだろう。もはや、温暖化阻止は無理という見方が強まっている。WHO(世界気象機関)も、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の目標である1.5℃〜2.0℃抑制は絶望的と警告している。
そこで注目されるのが、「環境移住」である。すでに一部の人間たちの間では、「気候オアシス」を求めての移動、移住が、世界規模で始まっている。
気候変動の猛威を逃れて、快適に暮らせるところはどこか? 現在、人気になりつつある「環境移住人気地」をガイドする。
「平年並み」と「例年通り」がなくなった
ようやく10月になり、秋がやって来たことを感じるようになった。しかし、いずれは10月でさえまだ夏という気候になっていくだろう。それほど地球温暖化のスピードは速くなっている。
天気予報であまり聞かなくなった言葉がある。「平年並み」と「例年通り」だ。
気象庁によると、「平年(値)」とは「平均的な気候状態を表すときの用語」で「10年ごとに更新した30年間の平均値」を用いるという。つまり、現在言われている「平年」は、1991 年から 2020 年までの平均値に基づいていて、2030年まで使われるという。また、「例年」は気象用語ではないが、「いつもの年」(三省堂国語辞典)という意味で、「例年だとこの季節には」というように使われるという。
しかし、この先もおそらく「平年並み」「例年通り」を聞く機会は少なくなるだろう。もはや、そんな季節はやって来ないと思ったほうがいい。
すでに、WHO(世界気象機関)は、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の目標である1.5℃〜2.0℃抑制は絶望的だという警告を出している。
温暖化を阻止できても気温は元に戻らない
IPCCの1.5℃〜2.0℃抑制というのは、「パリ協定」で定められたものだが、あくまで目安。この範囲に気温上昇を押さえ込めたとしても、その後、世界の気温が元に戻るわけではない。
気温上昇のシナリオには何通りかあり、現在の状況を見ていると、そのうちの「最悪シナリオ」になってしまうのではないかと思えてくる。そのシナリオでは、2100年の世界気温は2.8℃~4.6℃の範囲に上昇している。マキシムとされる4.6℃というのはすごい数字である。
もし本当に4.6℃上昇ともなれば、人類の生存は危機的状況になる。
もちろん、世界が総力をあげてGHG(温室効果ガス、主にCO2)の排出量を削減すれば、このシナリオはなんとか防げる。しかし、ほぼどの国も「カーボンニュートラル 」に真剣でない現状を見れば、そんなことは無理ではないか思える。
カーボンニュートラルの達成には、クルマの完全EV化、全固体電池の開発、再生可能エネルギーへの全面転換、グリーン水素の生産、DAC技術の確立、核融合発電の開発など、いま効果的と考えられるあらゆることに莫大な投資が必要だ。いまの高度文明生活をいったん捨て、どんなに貧しくなろうとCO2削減に邁進する覚悟が必要だ。そう考えると、そんなことができるとは、とても思えない。
とすると、選択肢は一つしかない。温暖化になんとか適合していく。それだけしかない。はっきりしているのは、いま私たちが暮らしているところが、いずれ、居住に適さないところになってしまう可能性があることだ。
つまり、夏の熱波がひどく、豪雨にひっきりなしに見舞われるようなところ。川べりの平地で洪水が起こりやすいところ。海沿いの平地で、海面上昇の影響を受けるところから、私たちはなるべく早く離れなければならない。
(つづく)
この続きは11月8日(水)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。
※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。
山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。