連載1107 もはや地球温暖化は止められない。「気候オアシス」への「環境移住」が始まっている! (中2)
(この記事の初出は2023年10月3日)
フロリダやアリゾナよりミシガンやミネソタ
最近のアメリカで、気候オアシスとして注目を集めているのは、ミシガンやミネソタ、サウスダコタなどの北部の州である。これらの州では、温暖化で冬の寒さが和らぐとされているので、このところ、移住者が増加している。
これまでは、温暖なフロリダ州やアリゾナ州、テキサス州などに移住する人(とくにリタイアメント)が多かったが、最近は、ミシンガン州が移住人口でフロリダ州を上回るようになった。そんななか、ミネソタ州のダルースは、最近、気候オアシスの最適地として有名になった。
ダルースはスペリオル湖の最西端に位置する美しい港湾都市。気候区分では、亜寒帯湿潤気候に属し、夏が涼しくて過ごしやすいことから「エアコンの効いた都市」と呼ばれてきた。しかし、冬の寒さは厳しく、最高気温が32°F(0℃、氷点)を下回ることがザラだったが、近年は温暖化で冬も過ごしやすくなったという。
ニューヨークで働く若い世代に、とくに人気なのがバーモント州である。バーモント州はニューヨークに比べると物価が安く、コロナ禍を避けて移住したリモートワーカーに補助金を支給したことで、環境移住地としての人気が一気に高まった。
バーモント州もまた冬の寒さは厳しいが、最近はそうではなくなったという。バーモント州と同じように、ニューハンプシャー州、メイン州も人気を集めるようになった。
ニューヨークを離れてウインターリゾートへ
当然だが、環境移住を最初に始めたのは、資金と時間に余裕がある富裕層である。 ニューヨークの場合、ハリケーン「サンディ」の大水害を見た彼らは、マンハッタンやブルックリンの海沿いの高級住宅地から近隣の高台の住宅地に住居を移すようになった。
さらに、余裕のある層は、ニューヨークを離れ、前述したミシガン州やミネソタ州、サウスダコタ州、ワイオミング州、コロラド州、アリゾナ州などの避暑地として有名な高原リゾートに移っていった。
そのため、ワイオミング州ジャクソンホールやコロラド州アスペン、アリゾナ州フラッグスタッフなどでは、住宅価格が高騰した。これらの高原リゾートは、今後冬の寒さが和らぐとされるので、新たな住宅開発に拍車がかかっている。
アスペンは、ロッキー山脈に抱かれた人口7000人ほどのウインターリゾートだが、有名人の別荘が立ち並び、不動産価格はニューヨークやロサンゼルスの高級住宅地と遜色がない。
アスペンは、日本で言ったら、北海道のニセコに当たるかもしれない。オーストラリアの富裕層はパウダースノーを求めて北海道に来て、ニセコが気候オアシスと知って、ここにリゾートハウスを建てるようになった。
ただし、日本人は、ニセコが気候オアシスで、環境移住の最適地だとは思っていない。
(つづく)
この続きは11月10日(金)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。
※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。

山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。
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