連載1109 もはや地球温暖化は止められない。「気候オアシス」への「環境移住」が始まっている! (完)

連載1109 もはや地球温暖化は止められない。「気候オアシス」への「環境移住」が始まっている! (完)

(この記事の初出は2023年10月3日)

環境移住の「適地」とされる美しい3つの島

 環境移住の適地は、人的交流をベースとしたビジネス、仕事を考えないなら、都市よりリゾート地である。前記した、コロラドのアスペンのようなところだ。
 ただし、高原リゾートより、アイランドリゾートのほうが、富裕層には人気がある。
 そこで、いま、環境移住先として人気の3カ所を最後に紹介したい。


[プリンスエドワード(カナダ)]
 プリンスエドワード島(PEI)は、カナダの東海岸、セントローレンス湾に浮かぶ島でカナダの州の1つ。といっても広さは愛媛県とほぼ同じ。世界的に愛されている物語『赤毛のアン』のふるさとだ。
 豊かな自然が広がる美しい島で、新鮮なムール貝やロブスターなどのシーフードが豊富。酪農も盛ん。『赤毛のアン』にまつわる観光資源に恵まれ、島全体が豊か。しかも、中心都市シャーロットタウンはインフラが整備され、スタートアップがカナダの中でも盛んな都市だ。
 気候移住以前から移住者が増え、いまやカナダ一の人口増加州となっている。移住者の中心は移民だが、それは移民プログラムが充実しているから。移民移住と並行して富裕層の移住も増え、不動産価格はここ10年、上昇を続けている。


[ゴットランド(スウェーデン)]
 ストックホルムから南へ200キロ。バルト海に浮かぶ楽園の島。「魔女の宅急便」の主人公キキがたどり着いた街コリコのモデルとなったという世界遺産の街ヴィスビーは、観光都市でもある。観光シーズンは5月から11月。それ以外の季節は、豊かで落ち着いた北欧暮らしが楽しめる。
 秋には森のトリュフ、冬には雪とウインタースポーツ、クリスマスマーケット。オーロラが見えるときもある。  この島にはなんとワイナリーがあり、独特のスウェーデンワインを生産している。ぶどう栽培の北限は、温暖化で北に移動している。温暖化した北国の気候、そして食とワインを求めて移住してくる欧州の富裕層、環境移住者が増えている。それにともない、物件価格も上昇中だ。


[ワイヘキ(ニュージーランド)]
 ニュージーランドは環境移住先としても、富裕層の移住先としても人気だが、とくに人気なのがワイヘキ島。最大都市オークランドからフェリーで約40分。“オークランドの宝石”と呼ばれる美しい島で、多くのワイナリーがある。観光客は、ワイナリーめぐりとシーフードを堪能して帰る。
 アメリカ人の富裕層は、ニュージーランドを地球になにかが起こったときの避難先、シェルターと考えていて、ワイヘキに豪邸を立てている。そのため、高級住宅地は“ハンプトンズ”とも呼ばれている。
 以上、3カ所を紹介したが、ほかにも気候移住の適地は世界に数多くある。しかし、そこに移住したとしても、地球温暖化の脅威から完全に逃れられるわけではない。
 いま言えることは、この先、「環境難民」「環境移住」が激増し、世界はどんどん混乱していくに違いないということだけだ。


(了)

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山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。

 

 

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