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共同通信
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1992年10月の天皇訪中を巡る事前協議で、当時天皇だった上皇さまの「お言葉」に対し、日本政府が中国側に「いかなる人の口からもコメントしないようお願いしたい」と要請していたことが20日、公開された外交文書で分かった。歴史認識を背景に、日本国内は保守派の慎重論が強く、史上初の訪中実現に向け「お言葉」の焦点化を回避するため、両国が細心の注意を払ったことが浮き彫りになった。
発端は92年2月21日、中国の楊振亜駐日大使の東京都内での講演だった。先の大戦に関し「一時期の不幸な歴史に対し、一つの態度を表明されれば、両国人民とも自然なことと感じると思う」と述べ、謝罪要求と受け取られた。
外務省は3日後の24日、申し入れの文案を作成し、27日に楊氏を呼びつけた。小和田恒事務次官が「国内的に極めて微妙な問題だ。世論の一部に賛否両論があり、自民党内部にも慎重論がある」と指摘。「余計な波風が立てば、日中双方で計画を合意する上で障害が生じる恐れがある」と迫り、中国の指導者を含めた協力を求めた。