岸田「海外バラマキ」に国民の怒り爆発!
戦略ゼロの外交で失われる未来 (下)
(この記事の初出は2023年12月5日)
石炭火力温存でまたも「化石賞」を受賞
もちろん、岸田首相は「COP28」で演説した。そのために、ドバイに出かけたのだから当然だ。しかし、その演説はあまりに陳腐で、「日本の地球温暖化の取り組みはこれだけ進んでいます」ということを“口先”強調しただけだった。
それなのに、日本の多くのメディアは、『石炭火力発電所の新設せず COP28 岸田首相が表明 』(FNN)、『岸田首相 “対策ない石炭火力発電所の新規建設せず” COP28』(NHK)と、いかにも日本の取り組みが進展したかのように伝えた。
しかし、これは報道のトリックと言っていい。
岸田演説をちゃんと聞けば、日本は石炭火力発電所建設を止めるなどとは言っていない。止めるのはNHK報道にあるように「対策ない石炭火力発電所」だけであって、対策を施した(CO2排出の効率が低いとされる)発電所は建設するのだ。
世界の流れが、石炭火力の廃止に向かうなかで、日本は削減だけにとどめたため、今年のG7広島サミットでも各国から批判された。それなのに、今回もまた石炭火力温存を表明したのだ。
原発再稼働がままならず、再エネ転換も思うように進まないなか、エネルギー供給から見て石炭火力を温存しなければならない事情があるのはわかる。しかし、それでもなお「いずれ廃止する」と宣言しなければならない。
この毎回変わらない日本の態度に、環境NCO「CAN」はまたしても日本を「化石賞」に選出した。ただし、今回は、日本のほかに、ニュージーランドとアメリカも選ばれた。
ロス&ダメージ資金提供をケチるせこさ
なぜ、アメリカまで「化石賞」に選ばれたのか?
それは、今回のCOP28の大きなテーマである「ロス&ダメージ」のファンドの設立・運営に関して、拠出金があまりにも低くすぎたからだ。
まず、議長国であるUAEは1億ドル(約150億円)、ドイツも同額の拠出を約束した。英国は6000万ポンド(約112億円)を表明した。ところが、アメリカは1750万ドルにすぎなかったのである。
そして日本は?というと、なんと1000万ドル(約15億円)である。
すでに、岸田首相は総理就任直後に出席した2021年11月のCOP26で、途上国への気候変動対策支援に、今後5年間で最大100億ドル(約1兆5000億円)を拠出すると表明している。今回の1000万ドルがその一部なのかはわからない。しかし、もしそうなら、今回の額はあまりに低すぎる。
温暖化対策は、なによりも優先しなければならない、人類社会最大の課題だ。それが、エジブトやヨルダンのような2国間援助より低くていいわけがない。
首相就任以来、安倍政権時以上にバラマキ
岸田外交は、安倍バラマキ外交の踏襲である。それもそのはず、安倍政権時代に外相をしていたのだから、そうなって当然だ。しかも、安倍政権時代より、派手にバラまいているのだから呆れるしかない。
そのバラマキに戦略はなく、ただ世界にいい顔をしただけとしか思えない。
これまでの外交履歴からバラマキ状況を見て行くと、国内がコロナ禍に喘いでいるというのに、2021年の総理就任直後から海外向け援助が急増している。前記したCOP26での途上国援助のほかに、2021年10月13日にアフガニスタンに2億ドル(約300億円)の支援、2021年12月7日には途上国に向けに今後3年で28億ドル(約4200億円)以上の支援を表明している。
そして2022年、2023年と海外バラマキは度を越している。とくに、ウクライナ戦争が起こったことで、ウクライナに対していきなり55億ドル(8250億円)援助を皮切りに総額76億ドル(1兆1400億円)をこれまでつぎ込んできた。
(つづく)
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※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。
山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。