岸田「海外バラマキ」に国民の怒り爆発!
戦略ゼロの外交で失われる未来 (完)
(この記事の初出は2023年12月5日)
海外援助のODAとはそもそもなにか?
ただし、「海外バラマキ」と言っても、そのほとんどはODA(政府開発援助)と呼ばれるもので、日本政府からのプレゼントマネー(贈与)ではない。ODAには、日本が開発途上国を直接支援する「2国間援助」と国際機関を通じて支援する「多国間援助」がある。
2国間援助には、「贈与」と「政府貸付」があるが、贈与は貸付に比べたら額が少ない。
つまり、ODAの多くを占めているのは貸付金であり、政府は財投債を発行しそれを貸し付ける。これは有償資金であるので、援助国からの返済がある。
2023年度予算で見ると、政府のODA事業予算は2.8兆円で、そのうちの2国間贈与は0.5兆円(無償資金協力0.2兆円、技術協力0.3兆円)、国際機関への出資等0.4兆円、政府貸付等1.9兆円となっている。
というわけで、「海外バラマキ」と言っても、贈与分を除いては返済されるので、ヤフコメやSNSで激怒されるほどのバラマキではない。ただし、中国の「一帯一路」と同じく、借金が完全に返済されるとは限らない。
また、少ないと言っても贈与の0.5兆円は、かなりの額である。また、その財源は一般会計であり、国民からの税金である。つまり、「国内は増税なのに海外ではバラマキ」という批判は的を射ているのだ。
来年2月東京でウクライナ経済復興会議
「イスラエルーハマス戦争」が起こったので、今後、パレスチナを含めた紛争地域に対して、日本はかなりの支援を求められるだろう。すでに、エジプト、ヨルダンには援助を約束した。
しかし、すでにウクライナ支援に莫大な額をつぎ込んだ日本に、そんな余裕があるだろうか。しかも、ウクライナ支援は今後さらにかさむ。
岸田首相は11月8日、ウクライナのゼレンスキー大統領と電話会談し、来年2月19日に東京で、日本が官民一体で復旧・復興を支援する「日ウクライナ経済復興推進会議」を開くことを約束した。
首相は、記者会見で「ウクライナと共にあるという日本の立場は決して揺るがない」と述べた。本当に、なんともお人好しとはこのことだろう。
今年の6月、英国ロンドンで開かれた「ウクライナ復興支援会議」で、ウクライナ政府は「今後1年間だけで60億ドル以上が必要になる」と訴えた。世界銀行は復興のためには4000億ドル(60兆円)以上が必要になると表明している。
その後、この額はさらに膨らんでいるので、来年の東京での会議で、日本はいくら援助を求められるか計り知れない。
いまの世界が見えないこの国の上層部
GDPでドイツに抜かれ、世界4位に転落。さらに時間の問題でインドに抜かれる。1人あたりのGDPでは、韓国や台湾にも抜かれて、世界27位。「気がつけばプアジャパン」となったのに、政治家のアタマは昔のままなのか?
「失われた30年」をさかのぼれば、かつての日本は中国に多額のODA援助を行ってきた。ロシアにも援助、北朝鮮にも人道援助、イランをはじめ中東諸国にも援助してきた。しかし、いまやかつてとは全然違う世界が出現している。それなのに、首相以下、この国の上層部には、その光景が見えないとしか思えない。
対外援助は、国際社会で日本が果たす役割として必要ではある。しかし、インフレ、円安、実質賃金18カ月連続マイナス、五公五民というなかで、ここまでやっていいものか。現在の政府が続く限り、日本は底知れぬ泥沼に落ちていくだろう。
(了)
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山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。