時を得たりと「裏金」「政治とカネ」の大報道 しかし日本はなにも変わらないだろう (上)

時を得たりと「裏金」「政治とカネ」の大報道
しかし日本はなにも変わらないだろう (上)

(この記事の初出は2023年12月19日)

 本当になにをいまさらという「裏金」「政治とカネ」報道が続いている。自民党安倍派は解体必至で、岸田内閣はもう持たないと、メディアは言い続けている。
 しかし、岸田内閣が倒れようと、万が一野党が政権を取ろうと、日本は変わらないだろう。なぜなら、今回の問題は政界ばかりではなく、日本社会そのものに問題があるからだ。私のこれまでの知見から言うと、日本社会は、実力、能力より、コネとカネがものを言う社会である。
 これを変えないかぎり、デジタル社会になったいま、日本の復活はないだろう。

「アベノミクス」「忖度」が日本を駄目にした

 連日のように、「パーティ券」「裏金」「キックバック」という言葉がメディアで踊っている。事件発覚以来、メディアはウケに入り、時を得たとばかり、岸田政権、自民党の不正を追及し、正義の斧を振りかざしている。
 このままいくと、自民党安倍派は解体され、自民党自体も大変革を迫られる。もう、岸田政権は持たず、年が明ければ間もなく総辞職に追い込まれると、盛んに「観測記事」を書いている。なにしろ、岸田政権の支持率は20%を割り、完全な危険水域に入っている。
 さらに、いままで「忖度」から政権批判をしなかったのに、安倍政治、アベノミクスは間違いだったと言い始めた。本当に、変われば変わるものである。
 私は、アベノミクスが始まったときから、アベノミクスは間違った経済政策だと批判してきたから、いまさらという感がある。ただし、今回の「パーティ券収入記載漏れ事件」は、安倍政治以前からの問題で、ことさら安倍政治を批判しても意味がない。
 ただ、安倍政治の8年間が、こうした日本社会の暗部を助長させ、救い難い暗黒社会にしてしまったことは間違いない。

日本人は本当に「忘れやすい」のか?

 いまさら、今回の事件の解説をしても意味がないので、やめる。最大の問題点は「政治とカネ」で、政治にはカネがかかる、カネがものを言うのが日本社会だということだ。そうでなければ、したくもないパーティをやってカネ集めなどしないだろう。
 カネが必要、それもオモテに出せないカネが必要だから、パーティをやり、数々の法令違反行為に手を染める。安倍内閣のときは、そうした行為がとくに顕著になり、虚偽答弁、答弁拒否、国会軽視、隠蔽、偽装、改竄など、権力はなにをやってもよくなってしまった。しつこく追及しなかったメディアの責任も大きい。
 それにしても、以下に記すような問題はいったいどうなってしまったのだろうか? 解決、決着しただろうか?
・森友学園問題・加計学園問題・桜を見る会問題・旧統一教会問題・伊藤詩織さん事件での容疑者逮捕揉み消し問題・日本学術会議の任命拒否問題・東京五輪汚職事件——–。
 日本人は「忘れやすい」と言われるが、メディアも同じで、いっとき大騒ぎするだけ。ことの本質、解決、決着に関して無関心だ。季節と同じように、話題は移り変わるものと考えて、一つの話題が終わると次の話題へと移っていく。それが繰り返されるだけだ。
 そうした見方から言うと、今回の「政治とカネ」問題も、いずれ忘れ去られるのは確実だ。

(つづく)

 

この続きは1月18日(木)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。 

※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。

山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。

 

 

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