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共同通信
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能登半島地震で石川県輪島市の伝統工芸「輪島塗」が大きな打撃を受けた。事業者でつくる輪島漆器商工業協同組合の加盟103社のうち13社が火災で焼失。他の工房や事業所も多くが甚大な被害を受けた。全面再開には時間がかかる見通しだが、前を向き始めた職人たちがいる。「弟子たちのため」「全国からの支援に応えたい」とさまざまな思いが背中を押す。
「今後も輪島で仕事を続けたい」。同市で150年以上続く工房「中島甚松屋蒔絵店」3代目の中島和彦さん(61)は、高齢の母と避難所に身を寄せる。自宅は基礎がずれ、2階の工房の床には漆器や工芸品が散乱し、足の踏み場もない。「思った以上にひどい。どうやって片付ければ」。肩を落とした。
制作のかたわら、全国から漆器や古美術品などの修理も引き受けていた。水を大量に使う工程もあり、「断水が続くうちは作業がまともにできない」と頭を抱える。幸いにも道具類は無事だったといい、地震後の火災で失った職人には「うちの道具を渡せる」と話す。