日本では「知らんけど」アメリカでは「Meh」
選挙の形骸化で崩壊する民主主義 (中2)
(この記事の初出は2024年1月9日)
アメリカ大統領選も投票率は50%台と低い
投票率が低いのは、日本ばかりの現象ではない。アメリカもまた、選挙の投票率は低い。あれほど熱狂する大統領選挙でも60%を下回っている。つまり、有権者のほぼ半数しか投票しないで大統領が決まっている。
トランプがヒラリー・クリントンを破った2016年の選挙では、1億3900万人が投票した。これは、有権者人口における投票率で56%にすぎなかった。次の2020年の選挙では、一時的に関心が高まり66.7%を記録したが、それでもまだ低いと言える。
アメリカの投票率の低さは、中間選挙では顕著である。過去100年間の投票率の平均は50%ほどで、なんと40%を割ったこともある。まさに、「Election, Meh」(選挙、それがどうした?)というのが、いまのアメリカの国民の多くが抱いていることで、とくに、ミレニアル世代、X世代(Generation X)では、それが顕著だ。
「バイデンvs. トランプ」なら「Meh」か?
投票率の低さは、民主主義の崩壊を招く。トランプ前大統領のような、とんでもないポピュリストの台頭を招く。もし、彼が先導した議会襲撃が成功していたら、アメリカはどうなっていただろうか?
中学の教科書的なことをあえて述べるが、政治は、国民の命、人権、自由、主権、税金、経済などを左右する最も大事なことなので、これに「Meh」はありえない。
しかし、アメリカの場合、「気候変動」「中絶」「銃暴力」「LGBTQの権利」などに、多くの国民は無関心だ。世論調査を見ると、これらの問題を重要と考えている国民は少なく、関心があるのはやはり経済が第一、つまりカネでしかない。
もちろん、支持政党によって関心度は違ってくる。民主党支持者のほうが共和党支持者より政治的なイッシューには関心度が高い。とくに、共和党支持者は気候変動や銃暴力に関しては著しく低い。
このような状況が続くと、今年の大統領選がどうなるかは、あまりに明確だ。「バイデンvs. トランプ」という「老人対決」となり、あまりのバカバカしさに、「Meh」が増え、投票率は低いままだろう。
(つづく)
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※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。
山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。