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共同通信
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金沢市で24日に行われる将棋の棋王戦第2局に、能登半島地震で自宅が倒壊した石川県珠洲市の塩井一仁さんが駒と将棋盤を提供する。妻を亡くし、失意の中にいたが、がれきの中から駒を見つけた。将棋に熱中する自分を応援してくれた亡き妻に思いをはせ、棋王の藤井聡太八冠と挑戦者の伊藤匠七段の対局を「彩ってくれたらうれしい」と話す。
塩井さんはアマ三段の実力で、日本将棋連盟石川県支部連合会理事。駒や将棋盤にも魅了され、漆を重ね塗りして字を浮き立たせた高級品の「盛り上げ駒」を複数所有。09年以降、金沢での棋王戦の対局でほぼ毎年、駒と将棋盤を提供した。
元日、自宅で妻の紀美子さんとだんらん中だった。震度6強の揺れで何が起きているのかも分からず、気付くと天井に押しつぶされた紀美子さんがいた。駒などの提供を見送ることを一度は決めたが、遺骨を前に考えた。「妻は将棋のことをどう思っていたかな」。「応援してくれていたから、提供しようと思った」
1月22日、自宅前に再び立ち約3時間かけてがれきをかきわけ、駒の入った箱を見つけた。