あるのか初の女性大統領誕生
ニッキー・ヘイリーはトランプに勝てるのか? (中2)
(この記事の初出は2024年1月17日)
2歳年上の州兵と結婚し1男1女の母に
ニッキーは、2男1女の3人きょうだいのなかで、愛情たっぷりに育てられ、Orangeburg Prep School(オレンジバーグ・プレップスクール)からClemson University(クレムゾン大学)に進学。1994年に、会計学のバチェラーを修得して卒業した。彼女は10代のころから、母親が始めた小さなブティックを手伝い、大学卒業後もそれを続けて商工会議所のメンバーとなった。
結婚は22歳のときで、相手は2歳年上のマイケル・ヘイリー(Michel Haley)。結婚を機にニッキーは、夫の姓のヘイリーに改名してヘイリーを名乗るようになった。また、改宗してシク教徒からメソジスト(Methodist)となった。マイケルは、サウスカロライナ州の州兵で、2012年には陸軍大尉としてアフガニスタンに派遣されている。
2人の間には、1男1女がいる。長女レナ(Rena)は現在25歳で、看護師として働いている。長男ナリン(Nalin)は22歳で大学4年生だ。
2人の子供は、母の大統領選挙のキャンペーンに積極的に協力し、FOXテレビなどのインタビューに登場している。ヘイリーにとって、自慢の子供たちと言える。
貧困層の子供を助け「コモンコア」を放棄
ニッキー・ヘイリーの政治的なキャリアのスタートは、2004年に全米女性経営者連盟の会計担当から会長に就任したことに始まると言っていい。
この就任を契機として、彼女はサウスカロライナ州の下院議員選挙に共和党から出馬して当選。3期務めた後、2011年にサウスカロライナ知事となり、その後、さまざまな改革を実施した。
まずは、共和党の保守派らしい不法入国を厳しく取り締まる議案を承認した。この議案により、在留資格が疑われる人々に対して在留資格の確認が義務化された。
ヘイリー州知事は、教育にはことのほか熱心で、貧困層の子供対しての支援を惜しまなかった。また、教育の自由化を積極的に推し進めた。つまり、「コモンコア」(Common Core:各州共通の基礎学習スタンダードで、日本の文科省の学習指導要領のようなもの)を放棄した。
「カリフォルニアの子供たちを教育するみたいに、サウスカロライナの子供たちを教育するなどしたくない」
と、ヘイリー知事は述べている。
その名を一躍高めた南部連合国旗の撤去
彼女の政治手腕が全米規模で評価されたのは、2015年6月のチャールストン教会銃乱射事件の処理だった。このとき、白人至上主義者の犯人が車のナンバープレートに「南部連合旗」(Confederate flag)を付けていたことから、州議会議事堂に掲げられていた南部連合旗が槍玉に挙がった。
すると、ヘイリーは即座に南部連合旗を撤去すること決定したのである。
この決定は、保守政党である共和党としてはありえないことだった。民主党なら撤去は当然だろうが、共和党となると微妙である。
ところが、ヘイリーは州共和党の大物ポール・サーモンドらを口説き落とし、超党派での合意を取り付けることに成功した。
そのときの思いを、ヘイリーは、子どものときに父親が受けた人種差別体験を披露して語った。父親が無人の農産物販売所で買い物をしようとしたとき、突然、警官が2人現れて、父親が代金を払うまで見届けたという。
以下は、この話に対して、ヘイリーが「NYタイムズ」の記事で語った内容だ。
「その農産物直売所はいまも同じ場所にあり、そこを車で通るたびに痛みを感じます。あの南部連合旗に、同じ痛みをこれほど多くの人たちが感じてきたのだと気づいたのです」
「これは私にとって個人的なことなのです。私はインド系移民の娘であることを誇りに思っています。両親はアメリカにやってきて、南部の小さな町に落ち着きました。父はターバンを巻いていました。母はサリを着ていました。私は、黒と白(黒人と白人)の世界で、褐色の少女でした。私たちは差別と苦労に直面しました。でも両親は、不満と憎しみに負けることがなかったのです」
(つづく)
この続きは2月15日(木)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。
※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。
山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。