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共同通信
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国の天然記念物「奈良のシカ」の血縁関係を調べた結果、奈良市外のシカが山間部などに流入し、交配が進んでいることが分かったと、福島大などの研究チームが20日、国際学術誌に発表した。千年以上前から保護され、独自の遺伝子型を保ってきた奈良公園の集団が、市外由来の集団に入れ替わる懸念がある。
奈良のシカは4エリアに分けて保護管理されている。チームは奈良公園などの「重点保護・保護地区(保護地区)」と、山間部などの「管理地区」のシカ計167頭分のふんや筋肉を収集。DNA解析で、保護地区では遺伝子型が独自の1種のみ、管理地区では他府県などでも確認される6種を加えた7種が検出された。
さらに、管理地区では市外に由来をもつシカが大半で、保護地区から来たシカとの交配がみられた。
チームの福島大の兼子伸吾准教授は、管理地区では数十年前にはシカの生息がほとんど確認されず、多くが市外から流入したと指摘。独自性を守る場合「保護地区ではより良い環境を整え、地区外はシカが来にくく、嫌がる環境にすることが重要だ」と語る。