共同通信
台湾で1月13日に総統選と同時実施された立法委員(国会議員=定数113)選では、女性の当選者が4割を超えた。背景には議席の一定数を女性に割り当てる「クオータ制」がある。制度は段階的に整備され、女性の政治参画を促進。「議会の質が高まった」とメリットが指摘されている。(共同通信=渡辺哲郎)
「男性66人 女性47人」。台湾の中央選挙委員会が公表した立法委員選の当選者には、女性の名前が並ぶ。女性比率は前回の2020年と並ぶ約42%。アジアトップクラスの多さを誇る。
台湾では民主化が進んだ1990年代から、女性運動などを受けてクオータ制の整備が急速に進んだ。大きな転機は2005年だ。民主進歩党(民進党)の陳水扁(ちん・すいへん)政権下で憲法を改正し「立法委員の比例区(定数34)について、各政党は獲得議席のうち女性の占める割合が半数を下回ってはいけない」と盛り込んだ。
1995年に約14%だった女性立法委員の比率は、憲法改正後の2008年には約30%に倍増した。女性への議席割当制度は地方議会にも導入され、クオータ制と関係のない首長も女性が目立つようになった。
立法委員の制度が保障する女性枠は、議席全体の約15%にしか満たない。だが東アジアのクオータ制について研究するお茶の水女子大の申☆(王ヘンに其)栄(シン・キヨン)教授は「女性が政治に参加してよいというメッセージを与え、女性候補の出馬を促進している」と意義を語った。
今回比例当選した国民党の女性議員陳菁徽(ちん・せいき)氏(44)は取材に、制度によって教育や育児など多様な問題が政治に持ち込まれやすくなると述べた。比例当選の台湾民衆党の陳昭姿(ちん・しょうし)氏(67)は、10代で子宮の発育不全が分かり養子を迎えた経験を持つ。「代理出産の解禁を進め市民の選択肢を増やしたい」と意気込んだ。
ジェンダーと政治について研究する台湾人の王貞月(おう・ていげつ)・西南学院大非常勤講師は、比率が低いと女性は発言権が弱く、男性議員に迎合してしまう「男性化」が起きると指摘する。だが「女性議員が一定以上になると競争が高まり、男性議員の質も上がる」と説明した。
一方、日本では2018年5月に「政治分野の男女共同参画推進法」が成立。国政や地方選で政党に候補者数の男女均等を促すが、努力義務のため罰則はない。2021年10月の衆院選で当選した女性の比率は10%に満たなかった。
申氏は「自民党1強」の日本では有権者の選択の幅が狭いとし「女性の政治参画を大幅に進める時期に来ているのではないか」と述べた。
クオータ制は議席などが多数派に偏らないよう人種や性別ごとに一定の人数や比率で優先枠を設ける仕組み。クオータは英語で「割り当て」を意味し、少数者の発言権の確保や男女格差の是正に効果があるとされる。一方で、有権者の意思を無視しており民主主義に反するとの指摘もある。海外では、上場企業の役員など民間分野での導入例もある。