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共同通信
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逆さまにしたグラスの縁からストローで空気を吹き込み、受け皿にしみ出た熱々のコーヒーを飲む―。インドネシア・スマトラ島アチェ州にある海沿いの街、ムラボの伝統的なコーヒーの飲み方だ。長時間温かさを保つ故郷の知恵を広めようとレンディ・リスキーさん(31)は州都バンダアチェでカフェを営む。(共同通信=山崎唯)
店名は、地元の言葉で逆さコーヒーを意味する「クピ・コップ」。空気を入れ、グラス内の圧を高めて受け皿に少しずつコーヒーを出す仕組みだが、こつがいる。ストローの先端を差し込む際、グラスを傾けると粗びき豆ごと受け皿に流出し、たちまち大惨事だ。ストローの先端を細くつぶし、適切な角度で差し込む必要がある。
レンディさんは「強い海風の中でもコーヒーが冷めるのを防ぎ、ごみも入らない。空気に触れず、酸味も増さない」と三つの利点を挙げる。ムラボがある西アチェ県は2019年、逆さコーヒーを地元の無形文化遺産として登録した。
コーヒー豆の販売が家業のレンディさんは大学生だった2013年に起業、カフェを始めた。使うのはアチェ州内陸の高地で作られる品種「ガヨ」のロブスタ種だ。評判は良く、2023年12月の改装で店舗を広げた。
土曜日の昼下がり、カフェでは多くの客が器用にストローでコーヒーを飲んでいた。リリン・フェグリナさん(37)は「一度に少ししか飲めないので、長い間楽しめるのも魅力」と家族で談笑しながら堪能。日本では飲み物にストローで息を吹き込むと行儀が悪いとされるが、レンディさんは「ここでは大丈夫。ぜひアチェに来て」と笑った。