暖冬で雪不足も、このまま春に。
そして、10万年に1度の猛暑の夏がやって来る! (上)
(この記事の初出は2024年1月30日)
暖冬で雪不足の日々が続いている。おそらくこのまま、すぐ春になる。そして、あっという間に去年並みかそれ以上の猛暑の夏がやって来る。地球温暖化は、われわれが直面している最大の問題なのに、なぜかこの国ではほとんど問題にされていない。
裏金事件で政治への意識は高まっても、温暖化に対しての意識は高まらない。しかし、危機は確実に近づいている。この危機は、株価暴落のような一気にやって来る危機と違って、じわじわと深刻化する。今年の夏は、去年に続いて「10万年に1度」の夏になる模様だ。
雪不足のなかでのスキージャンプ女子W杯
まずは、身近な話から始めたい。私は、スキージャンプの大ファンで、とくに女子の試合は必ず見る。20代のとき、レークプラシット冬季五輪の日の丸飛行隊を取材してからファンになった。当時は、女子ジャンプなどなかった。
観戦と言っても、もちろん、テレビ、ネット観戦だが、先週のワールドカップ第13戦、第14戦のリュブノ(スロベニア)大会を見て、やはりと思ったことがある。
雪がないのだ。あるのはジャンプ台だけ。スロベニアきってのスキーリゾートなのに、真冬とは思えない雪のない田園・山岳風景がテレビ画面に映し出されていた。
近年、欧州のアルプス中心の山岳地帯に降る雪は激減している。スイスやオーストリアなどでは、12月に入っても雪が降らず、雪のないクリスマスを迎えた年もある。これでは、“冬の華”ウインタースポーツの大会は盛り上がらない。というか、開催すらできなくなる。
日本も事情は同じで、リュブノの前の週の山形県蔵王でのワールドカップ第11戦、第12戦の開催は、雪不足で危ぶまれていた。ともかくあまりに雪が降らないので、場外から雪を運び込んでジャンプ台だけは整備した。
ところが、直前になって大雪となり、第11戦の公式練習、予選、本線を行えた。しかし、第12戦は中止に追い込まれたのである。雪が積もったのになぜ、中止になったのか?
それは、雪が降ったのはいいが、強風を伴う大雨となったからだ。これでは、危険ということで中止せざるをえない。雪ではなく雨。まさに、地球温暖化による気候変動の弊害である。
暖冬で雪が少なくスキー場が開けない
今年の冬は暖冬で、日本列島では一部をのぞいて雪がほとんど降っていない。このまま2月も降らないと、過去にない暖冬で終わる可能性が高い。すでに、気象庁は早くから「暖冬予想」を出し、最近も、「春は1、2週間早くなる」という予測を公表した。
雪が降らないとスキー場は開けない。そうしたスキー場が、今年の冬は数多く出た。例年になく雪が少ないのが、岩手県。秋田県との県境に位置し、県内でも豪雪地帯として知られる西和賀町の町営湯田スキー場は、1月27日時点で積雪28cm。スキー場をオープンするには80cmは必要というので、このままオープンできずに終わってしまう可能性があるという。
岩手県では、気象庁の観測地16地点すべてで、降雪量は平年を下回ったままだ。青森県も同じような状況で、いつもなら12月初めにオープンする大鰐温泉スキー場は、今年になって1月17日にやっとオープンしている。
長野県、新潟県も雪不足である。とくに有名スキー場をいくつも抱える長野県の雪不足は深刻で、たとえば、飯山温泉がある飯山市の12月の積雪量は平年比でなんと36%、たったの57cmでスキー場は開けなかった。
そのため、スキー場一帯のホテルや旅館の経営は行き詰まり、市は融資の限度額を引き上げるなどの金融支援をせざるをえなくなった。
(つづく)
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※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。
山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。