暖冬で雪不足も、このまま春に。
そして、10万年に1度の猛暑の夏がやって来る! (下)
(この記事の初出は2024年1月30日)
雪は減るが、ドカ雪、豪雪に見舞われる
温暖化によって、これまで雪が多く降っていたところは、これまでどおりには降らなくなる。そういう予測は正しいのだろうか? また逆に、いままで以上に降るところもあるというのは本当なのだろうか?
そんな疑問に答えてくれる本がある。気象庁気象研究所の川瀬宏明氏が書いた、そのものズバリの『地球温暖化で雪は減るのか増えるのか問題』(ベレ出版)という本だ。
IPCC(国連気候変動に関する政府間パネル)の予測では、今世紀末の気温上昇は最高シナリオで産業革命前(1850年〜1900年)のレベルから5.8℃の上昇である。現在、世界各国が取り組んでいる目標値は、産業革命前のレベルと比較して、1.5〜2.0℃以内に抑えるということである。
これを踏まえて、2000年の日本の気温は年平均で4℃程度、冬季は5℃程度上昇すると仮定すると、雪が降る地方では降り始めが遅くなり、降り終わりが早まるという。北陸や西日本では初雪が年明けになる可能性がある。また場所によっては、1月に入っても気温が0℃を下回らないので、そうなると雪はほとんど降らないという。
ただし、降雪量が増えるところもある。とくに北海道は逆に増える可能性があるという。また、降雪量が減ったとして、一時的なドカ雪、豪雪に見舞われることが増すそうだ。
温暖化で海水温が上がれば、海から大量の水が蒸発し、大気中の水蒸気の量が増える。それが雲となり、冷えれば雪となる。つまり、降雪地帯では、厳冬期のドカ雪、豪雪は増えるという理屈だ。
2023年の気温上昇は目標ギリギリの1.48℃
温暖化で冬が暖かくなるのは仕方がない。むしろ、歓迎する人間もいる。ただし、夏がさらに暖かくなるのは堪えがたく、多くの人間が嫌う。すでに、赤道地帯では、気温上昇で「気候難民」が発生し、大きな問題になっている。
そこで、一足先に今年の夏はどうなるかとみると、昨年の猛暑以上の「猛暑の夏」になる可能性が大である。
昨年に関しては、EUの気象機関「コペルニクス気候変動サービス」(C3S)が、1月9日に会見を開いて、データを公表している。
それによると、2023年の地球の平均気温は、産業革命前(1850~1900年)のレベルより1.48℃上昇したという。この数値は、IPCCの目標値の下限の1.5℃ギリギリまで迫っている。また、前年比での気温上昇幅は観測史上最大となったという。
さらに、世界がこれほど暑くなったのは「10万年ぶり」のことだというのだ。
C3Sのカルロ・ブオンテンポ所長は、次のように述べた。
「この10万年で世界がこれほど暑くなったことはない」
「都市や農場など、現代社会のあらゆる地域で、これほどの暑さに耐えたことはなかった」
「われわれは、環境リスクの評価方法を根本的に見直すべきだ。というのも、もはやこれまでの歴史は、われわれが経験している前例のない気候の比較対象ではなくなっているからだ」
(つづく)
この続きは2月29日(木)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。
※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。
山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。