(この記事の初出は2024年1月30日)
なぜ10万年前の気候がわかるのか?
世界と同じく、2023年の日本も異常に暑かった。
気象庁は1月4日に、2023年の平均気温が、平年値(2020年までの30年間平均)を1.29度上回り、1898年の統計開始からもっとも高い年になったことを発表している。
ちなみに2023年の全国最高気温は、8月5日に福島県伊達市、8月10日に石川県小松市で記録した40.0度である。いずれも、南ではないことが注目される。
東京都心では11月7日に真夏と同じ27.5度を記録し、11月観測史上最高を100年ぶりに塗り替えている。
それにしてもなぜ、C3S は、昨年の気温上昇を「10万年ぶり」などと言ったのか?
C3Sの説明によると、人工衛星からの最新データ、1850年から記録されている地球の気温、そして世界各地の深海堆積物、サンゴの骨格、木の年輪、氷床コアから得られた「古気候を表すプロキシ(代理)データ」を分析した結果だという。
古代の氷床コアや木の年輪などは、古代の気候を知る上の重要なデータで、科学者たちは当時のCO2やメタンといったGHGの濃度を測定し、現代と比較している。
2023年がこれほど暑くなったのはなぜか?
もはや説明するまでもないが、このような短期間での気温上昇(地球温暖化)を引き起こしているのは、人間活動である。産業革命以後のGHGの大量排出である。
ただし、日毎の天気予報では、それよりも、太平洋の海面水温が高くなる「エルニーニョ」現象を2023年の気温上昇の“主犯”として報道している。2023年の夏は、この現象により海水温が異常に上がり、それが猛暑を引き起こし、さらに暖冬の原因になっていると、お天気キャスターたちは指摘する。このエルニーニョ現象は依然として続いており、まだピークを迎えていない。
最近の観測報道によると、ピークは2〜3月になるとされ、そのため、今年の夏は2023年よりもさらに暑くなるという。10万年に1度の夏がまたやって来るのだ。
Google検索をすると、ドイツのメディアに、保険会社のミュンヘン再保険(Munich Re)が、2023年に気候変動による世界の損害を集計した結果が載っている。それによると、その総額は約2500億ドル(約37.5兆円)。ウクライナ戦争、イスラエル・ハマス戦争の損害額をはるかに上回っている。
無関心すぎて温暖化を止めるのは無理
10万年に1度の夏が2年連続すれば、IPCCの目標の達成など不可能だと思える。2015年の「パリ協定」など、意味をなさなくなるのではなかろうか。各国は「2050年カーボンニュートラル」を宣言しているが、本当にやる気があるのだろうか。
IPCCのガイドラインでは、世界の平均気温が産業革命前のレベルを1.5℃上回る状況が「少なくとも20年間続けば署名国は約束を守らなかったことになる」とされる。まったく悠長な話である。
もちろん、罰則などないのだから、守る国があるとは思えない。 CO2の大量排出国、中国、インド、アメリカ、EU、日本などは今後どうするのか? 馬鹿げた戦争をやっているロシア、イスラエル、アラブ諸国はなにを考えているのか。
米大統領に再選を果たしそうな勢いのトランプは、いまだに「温暖化はフェイク」と言っている。
昨年来、日本の国会はたるみきり、今国会も「裏金問題」をのらりくらりと議論しているだけ。ここまで、国会で温暖化対策が真剣に議論されたことは1度たりともない。
(了)
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山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。
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