NY株も日本株もいずれ暴落する! そのあまりに当たり前でシンプルな理由とは?(完)

(この記事の初出は2024年2月6日)

バブル崩壊は中央銀行によって先送り

 いまは「コロナショック」と呼んでいる株価の暴落は、じつはコロナのせいではなく、膨れ上がった金融バブルの崩壊なのである。それまでもアメリカは2008年のリーマンショック以後、日本はアベノミクスによる金融緩和を続けてきた。そのバブルが、コロナをきっかけとして、風船が割れるように弾けたのである。
 金融バブル相場は、俗に「ゴルディロックス相場」(英国の童話に基づく表現で、日本では“適温相場”と称された)と言われ、コロナ禍前の2019年には、もう続かないだろうと有力なファンドマネージャーたちは警告していた。
 したがって、コロナショックは単なる引き金であり、コロナ禍そのものが暴落を招いたのではない。つまり、2020年3月の株価暴落は、正確にはコロナショックではなかった。
 バブル崩壊は次のバブルによって先送りされる。これが、20世紀後半から繰り返されてきたことで、コロナ禍でもそれが起こった。これが金融経済であり、金融バブルである。そして、バブル崩壊は、政府が中央銀行を使って公的資金を投入することで先送りされ、次のバブルが形成されるのである。
 バブル崩壊は中央銀行が救ってくれ、金融緩和により、中央銀行は次の金融バブルをつくり出す。これが金融経済のメカニズムである。

FRBは昨年も金融バブル崩壊を先送り

 コロナ禍の2年あまりの間は、あらゆる経済指標が悪化した。しかし、株価だけは上がった。
 そしてこの状況、余韻はいまもなお続いている。FRBも ECBも、日銀を除く世界中の中央銀行が金融引き締めに入り、金利が上昇したにもかかわらず、株価は上がり続けた。ただし、中国だけは例外である。
 暴落が起これば、中央銀行が助けてくれる。バブル崩壊は先送りされるというのだから、投資家にとってリスクがないも同然。株価はいくら下がってもまた上がり、上値を更新する。そういうメカニズムができ上がってしまった。
たとえば、アメリカでは2022年から利上げが始まり、緩和(QE)から引き締め(QT)に転じたことで、マネタリーベースは縮小した。
 しかし、昨年3月シリコンバレー銀行が突然破綻し、シグネチャー銀行も破綻したため、FRBは「銀行タームファンディングプログラム(BTFP)」(FRBが金融機関を対象に米国債や住宅ローン担保証券を担保として最長1年の融資をする仕組み)を実施し、再びマンタリーベースを拡大させた。この拡大はいまも続いているので、NY株価は下がりようがない。

次のバブル崩壊を防ぐ手立てはあるのか?

 しかし、このような金融バブルの繰り返しがいつまでも続くはずがない。バブルを次のバブルにより先送りするのだから、やがて量的緩和だけでは救えない状況が訪れる。
 バブルの繰り返しを見ると、2001年のIT投資によるドットコムバブル、次のサブプライムローンによる住宅ローンバブル(リーマンショック)と続き、リーマンショックの負債をFRBが救って金融バブルをつくり、それがコロナショックで崩壊すると、公的資金のバラマキによって再び金融バブルをつくった。
 しかし、世界の実体経済の現状を見ると、この株価の暴騰による金融バブルはもう本当に危ういところまで来ている。
 心配なのは、中国の株価が昨年から大きく崩れていることだ。昨年まで3000ポイント半ばで推移していた上海総合指数は、2800ポイントを割り込むまでになっている。上海指数の1月の月間下落幅は6.27%である。
 リーマンショックのとき、大規模な財政出動で世界を救った中国だが、不動産バブルが崩壊したいま、株価崩壊を救う余力は残っていない。
 世界はいま、米中欧の3大経済圏で成り立っている。その一つの中国が大きく崩れ、米欧が金融引き締めによるリセッションに入った場合、金融バブル崩壊を防ぐ手立てはもう残されていないのではないだろうか。
 いずれにせよ、金融経済は、株価が上がるメカニズムになっている。そして、暴落すると政府と中央銀行が救ってくれ、次の上昇に入る。しかし、次回の崩壊は、マネーがあまりに増えすぎたため、これまでにない崩壊になるのではないだろうか。そして、その日は意外と早くやって来るのではないだろうか。

(了)

 

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山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。

 

 

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