(この記事の初出は2024年2月13日)
バブルの崩壊を政府が公的資金で救済
現在の株価の暴騰は、実体経済と関係ないのだから、明らかに「バブル」である。だから、やがて崩壊する。しかし、これまで起こったバブルの崩壊は、政府が公的資金を注入してすべて救済してきた。
最近では、2001年のドットコム・バブル、2008年のリーマン・ショック、そして2020年のコロナ・ショックと、ほぼ10年ごとに、崩壊したバブルはみな公的資金で救済されてきた。
コロナ禍が始まった2020年3月16日、NYダウは、前営業日比で2997ドル安という過去最大の下げ幅を記録した。市場は総悲観となり、その後も下げ続け、とうとう2万ドルを割り込んで1万8591ドルまで下落した。これは、2月12日に付けたそれまでの過去最高値2万9551ドルから1万ドル以上の下げで、下落率も36%を超えていた。
日経平均も同じだ。コロナ禍が顕在化した2月後半から、連日下げ続けた。そうして3月19日、一時的に1万6358円を記録した。
ところが、NY株も日本株も、この後、大反転して今日に至っている。その理由はあまりに簡単だ。政府が大規模な金融緩和を行い、マネーをばらまいたからだ。
FRBは昨年も金融バブル崩壊を先送り
バブル崩壊による暴落が起これば、政府と中央銀行が助けてくれる。バブル崩壊は常に先送りされ、何度も繰り返されるというのだから、投資家にとってリスクがないも同然だ。株価はいくら下がってもまた上がり、上値を更新する。そういうメカニズムが、いまでき上がっている。
たとえば、アメリカでは2022年から利上げが始まり、緩和(QE)から引き締め(QT)に転じたことで、市場に出回るおカネ、マネタリーベースは縮小した。したがって、株価は下がってもよかった。
しかし、昨年3月にシリコンバレー銀行が突然破綻し、続いてシグネチャー銀行が破綻したとき、FRBはなにをしただろうか?
FRBは時限措置として「銀行タームファンディングプログラム(BTFP)」(FRBが金融機関を対象に米国債や住宅ローン担保証券を担保として最長1年の融資をする仕組み)というのを実施し、1度減らしたマネタリーベースを拡大させたのである。
日本はといえば、いまだに空前の緩和を続けている。続けているというより、アベノミクスにより続けざるをえない状況に追い込まれてしまった。ここで緩和から引き締めに転じたら、なにが起こるかは明白だ。
バブルかどうかより崩壊の防止議論せよ
現在の株高による金融バブルは、いずれ崩壊する。問題は、その引き金となるのがなにかだ。アメリカの場合、3月でFRBの銀行救済措置「BTFP」が期限を迎えるが、これが引き金になるかもしれないと言われている。
しかし、大統領選挙イヤーだから、なにがなんでも崩壊を食い止めるという見方が強い。
一方の日本バブルは、もし崩壊局面になった場合、これ以上の緩和ができないので、どうなるのか予測ができない。もはや、次のバブルをつくり出せる力は残っていないと思える。
現在、いまの株高が「バブルか、いやバブルではない」という議論があるが、これほどバカバカしいことはない。そんなことは明白なのであり、議論すべきは、次のバブル崩壊をどうやって防ぐかだ。一般国民の負担をこれ以上増やすことなく、バブル崩壊を防ぐ。そんな名案が、はたしてあるのだろうか?
*このメルマガとほぼ同内容のコラム記事を「Yahoo!ニュース」に寄稿しました。こちらも合わせてお読みください。
https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/1409b1e5a0aed3ea50ca8d91392a2c61f031ec87
(了)
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山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。