共同通信
海がない栃木県にある「なすび食堂」(栃木市)が、サメ料理で話題を集めている。食感は柔らかく、あっさりした味わい。同県では以前から郷土料理にサメが活用されてきたが、今では提供する店が減少。関係者は「珍しい食事の体験は土産話になる」と話し、伝統食で地域を活気づけたい考えだ。(共同通信=片山歩)
サメはアンモニアを多く含むため腐りにくく、海から離れた内陸部の同県にも運ぶことができ、タンパク源として重宝されていたという。しかし、流通の発達とともに食の選択肢が広がると需要も減った。宇都宮市の魚屋「阿づまや魚店」の三村卓也(みむら・たくや)さん(43)は「販売量は25年前の3分の1ほど。昔から親しんだ食材が姿を消すのは寂しい」と話す。
なすび食堂は2010年7月、栃木市と日本財団からの支援でオープンした。築約100年の木造建築を改修したレトロな店構えで、障害がある人も厨房(ちゅうぼう)などで働いている。運営元の社会福祉法人「なすびの里」の殿塚治(とのつか・おさむ)理事長(74)は、サメを食べるというインパクトに加え「歴史ある街だからこそ、昔からの地元の食文化を守り、知ってもらいたい」とサメ料理を看板にした。
「モロ」と呼ばれるネズミザメを使い、メニューにはフライや煮付けなどをそろえた。石海春彦(いしうみ・はるひこ)料理長(71)は「最初は扱いに戸惑ったが、研究を重ねておいしく仕上げている」と自信を見せる。特有のくさみや水分が出ないよう工夫し、作り置きはしないというこだわりだ。
料理を食べた国内外の観光客からは「イメージとは異なる食べやすさで驚いた」という声も。竹内令子(たけうち・れいこ)店長(51)は「サメ料理のファンが増えている」と笑顔だ。
人気の「とちぎ定食」は、フライとともに、なすびの里の事業所で作ったうどんが楽しめる。1300円。