米大統領選の最大の争点となった「移民問題」 トランプ断然有利とされるが大波乱も!(中1)

バイデン政権になって不法移民が急増

 2023年の1年間だけで、アメリカに不法に入国してきた移民は約250万人に達した。人口100万人を超える大都市が2つ以上もできてしまうという、ものすごい数だ。
 メキシコから南部国境を超えた彼らは、テキサスなど南部諸州からニューヨークやロサンゼルス、シカゴ、ボストンなどの「サンクチュアリ・シティ」(Sanctuary City、聖域都市)に、バスに乗せられて送りつけられる。
 「聖域都市」では、移民保護政策により、移民を保護施設やシェルター、仮設テントなどに収容してきたが、もはや満杯で、NYではアダムス市長が連邦政府(バイデン政権)に泣きついて、救済を要請している。
 メキシコから陸路で国境を越える不法移民は、バイデン政権になって急増した。民主党左派の圧力で、移民寛容政策を取ったからだ。さらに、トランプ政権時にパンデミックの公衆衛生対策を口実にして発動した「タイトル42」(移民排除法)が、昨年5月に失効することになっていたことが、移民キャラバンに拍車をかけた。
「タイトル42」が失効したとはいえ、バイデン政権が設けた規制はアメリカ国境通過前に通過した国(メキシコを指す)に不法入国した履歴がある人間は受け入れないというものだった。つまり、規制はそれほど大きくは緩和されなかった。しかし、そんなことはお構いなしで移民は殺到した。
 業を煮やしたバイデン政権は、昨年10月、トランプの看板政策だった「国境の壁」建設の再開を表明したが、これもほとんど効果がなかった。「NYタイムズ」の記事によると昨年春から12月までにNYに送られてきた移民は、なんと15万1000人になるという。1カ月に約2万人もNYにやって来ているのだ。

南米激増のなか、中国も2年前の50倍に

 不法移民は、どこからやって来るのだろうか?
 トランプ前政権までは、メキシコを除くと、エルサルバドル、グアテマラ、ホンジュラスなどの中米諸国が大多数を占めていた。しかし、最近はコロンビア、ペルー、ベネズエラなどの南米諸国からの移民が増加している。また、モーリタニア、コンゴなどのアフリカ諸国からの難民もいる。
 特筆すべきは中国で、中国人は、2021年の450人から2023年には2万4314人と、なんと50倍以上も増加し た。
 中国人移民たちは、本国出国後、香港やマカオなどを経由して、ビザを必要としない南米エクアドルに空路で入る。その後、業者にカネを払って移民キャラバンに加わり、陸路を2カ月かけて踏破。アメリカに到達すると、国境警備当局へ出頭して亡命を求める。
 亡命申請すれば裁判所が審査することになるが、これは、申請の数が多すぎてかなり時間がかかる。ただし、それまでの間はなにがあろうとアメリカにいられるし、たいていの場合、亡命申請は認可される。
 トランプ時代は亡命申請してもメキシコ側に引き渡されて、入国は許されなかった。しかし、バイデン政権になって受け入れるようになった。

不法移民はNY到着後、どうなるのか?

 南部諸州は共和党州(レッドステイト)だから、不法入国者の激増に激怒。テキサスのアボット知事ら各州の知事たちは、「不法移民移送バス」を仕立てて、彼らをNYなどの聖域都市に送りつけてきた。
 民主党州(ブルーステイト)であり、民主党が市政を担うNYなどの聖域都市では、彼らを保護せざるをえない。なにしろ、「不法入国だろうと人権は尊重しなければならない」というのが、民主党左派の主張だからだ。
 NYでは、移民用シェルター、仮設テントなどの避難施設を大量につくり、さらに民間のホテルまで借り上げて移民の収容施設にした。
 そんなホテルの一つ、グランドセントラルそばの「ルーズベルトホテル」は由緒あるホテルだったが、コロナの影響でクローズされると、不法移民の受け入れセンター&一時収容施設に様変わりしてしまった。
(つづく)

この続きは4月4日(木)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。 

※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。

 

山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。

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