NJマグネット・ハイスクールBCAを訪問 広島国泰寺高校、コロナ後の現地交流を再開

 

3月25日と26日の2日間にわたり、広島国泰寺高校が、ニュージャージー州のBergen County Academies (“BCA”)を訪問した。 同プログラムは、2006年からはじまり、コロナ禍の中断を経て、2018年以来の開催。学内での選抜を経て選ばれた生徒6人と先生2人が参加。生徒たちは、 12月からオンライン会議などを通じてBCAの生徒たちと交流を重ね、今回の訪問を迎えた。

1日目の25日は、学校を訪問し、学校の様子を見学したほか、生徒たちと一緒に授業に参加し、バレーボールをおこなうなど交流を図り、2日目の本番に備えた。2日目は、BCA校内化学教室において、参加生徒6人がそれぞれの持ち場に分かれ、BCAの生徒たちに、同高校や広島県の説明に加えて、国連の持続可能な開発目標(SDGsにも絡めた形で、科学に関する研究を説明した。

発表テーマは、「色の違いによる光の熱吸収率の違い(“Study of the changes in the heat absorption rate of light depending on color”)」や「聞きなれた音とそれらが感情に与える影響の分析(”Analyzing familiar sounds and their effects on emotions“)」などで、3時間以上にわたるプレゼン時間のなかで、BCAからは、休み時間などを通じて、多くの生徒が訪れ、国泰寺高校生徒の説明に熱心に耳を傾けるとともに、活発な質疑応答が見られた。国泰寺高校の生徒たちも、さすがに最初は緊張した様子が見られたものの、時間が経つにつれ、表情も和やかに。

参加した藤廣ひなたさん(2年生)は、「発表を聞いてくれた生徒に日本のお菓子をお土産として渡そうとして断られた理由が、『ラマダン中だから』と言ったことに非常に驚いた。BCAにはいろいろな人種、宗教の人がいて、その違いによる障壁がなくみんなが溶け込んでいるということに気づいた。よく『違いを認め合おう』と言われるが、それがBCAでは自然にできているのだなと思った。BCAの人に聞くと、自分の宗教でなくてもラマダンや祝日を覚えているそうだ。色々な人が同じ学校にいるから、色々なことに目を向けて、今はラマダン中だからイスラム教の人の前でご飯を食べないように気遣うなどの知識を持っておくことが大切なのだと言っていた。これは日本では考えたこともなかったので、よい経験だったと思う」と述べた。

ポスターセッションについて友田栞さん(2年生)は、「BCAの人は聞く姿勢も反応もとてもよくて、ポスターセッションを12回以上行って大変だったが、楽しんでやれた。発表が終わった後に“it’s cool!!”と褒めてくれて、率直にすごいねと熱意を持ってコメントをくれたのがすごく印象深かった。ポスターに記載していない部分ももっと詳しく話せるように工夫したいと思った。」と述べた。今回の引率にあたった鳥生典江先生も、「隔年で訪問し合っていた両校の交流がコロナ禍でストップしてしまった間も、オンライン研究交流を通じて継続できてBCAの担当の先生方に感謝している。本校の生徒たちは今回のプログラムの意義を強く感じており、多くの人の助けを受けて研修できたので、お世話になった全ての人に心から感謝している。アメリカに住む同年代の生徒と直接話し、一緒に授業を受けたことが生徒たちに多くの学びをもたらし、もっと勉強してもっと世界のことを知りたいと意欲が高まっている。今後も両校の生徒にとってよりよいプログラムになるよう尽力したい。」と語った。来年1月には、BCAが同校を訪問予定。

尾花彩乃さん(2年生)は、授業体験について「膨張率の問題を解いた物理も、数列をした数学も、面白かった。Linear Systemsなどの自分の知らない解き方をしていたのがとても興味深く面白かった。英語の授業はBCAの生徒がテストを受けていたので授業体験はできなかったが、その間、教室にある作品や本を見ることができた。興味深いものが多く、見ていてとても楽しかった。歴史ではグループでそれぞれ与えられたお題について調べてWord文書にまとめていた。先生の質問に対し生徒たちが積極的に答えていたのが印象に強く残った。プログラミングの授業内容は難しかったが、バディの子が作ったプログラミングを見せてもらえて、とても楽しかった。どの授業もとても楽しく、アメリカとの文化の違いや研究の内容は聞いていてとても楽しかった。」と述べた。

広島国泰寺高校は、創立147年の全日制普通科高校で、旧制広島第一中学校以来の人間教育の伝統を受け継ぎ、政財界や文化・スポーツ界などに多くの優秀な人材を輩出してきた。校訓は「質実剛健、礼節気品、自治協同」で、国際社会の平和と発展に寄与する人材を育成することを目標としている。理数コースを設置し、スーパーサイエンスハイスクール(“SSH”)の指定を3度受け、理数教育に力を注いでいる。科学部(数学班・生物班・物理班・化学班・地学班・ソリューション班)での研究と併せて「理数探究」の授業でも課題研究を深化させ、様々な場で発表している。SSH指定時代の2006年にBCAとの研究交流を始め、コロナ禍もオンラインでの研究交流を続け、今年度訪問を再開した。また平成最後の年にワールド・ワイド・ラーニング(WWL)拠点校の指定を受け、海外交流や探究的な学習にさらに力を入れ、文理融合科目「グローバル平和探究」を開発し、SDGsに関連したグローバルな社会課題について現状を的確に分析に、自分事としてSDGsに「自分はどうかかわるか」を考える生徒を育てている。

BCAは、Hackensack, NJにあり、科学技術、ビジネス、アートなど7つの専門学術コースをもつ公立マグネット高校。2021Niche高校ランキングでは、全米トップにも選ばれている。BCAでは、校外との交流プログラムにも力を入れており、今回のようなプログラムを全世界12か国の学校と展開。つい先日は、デンマークの高校生が同校を訪問していた。また同校は、企業との交流にも力を入れており、企業訪問数は年間150社を超えるとともに、同校生徒はシニア年度において、年間を通じて週1日インターン活動をおこなうことがカリキュラムに組み込まれている。同校グローバル教育担当のMark Tronicke氏は、「我々は、グローバル・リーダーの育成を目指しており、視野を広げるのは、若ければ若いほどいい。かつて国泰寺高校とのプログラムにおいて、宇宙飛行士を招いたことがあったが、そのプログラムに参加した際の学生の多くが、その後宇宙飛行士としてのキャリを目指した際には、この国際交流プログラムの意義を感じる瞬間であった」と語った。

 

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