この4月「引越し難民」が大量に発生する
今回実施される時間外労働の規制強化が直撃しているのが運送業界であるのは、すでに周知の事実である。運送業の時間外労働は年960時間が上限になったため、ドラバー不足がよりいっそう深刻化した。
すでに人口減と賃金安で、日本ではエッセンシャルワーカーが大幅に不足している。この問題は一朝一夕に解決できるものではないのに、これまでずっと放置されてきた。それが、今後、どんどん顕在化するのだ。
とくにいま深刻なのが、引越シーズンなのに業者の人手不足、ドライバー不足、夜間勤務短縮などで、引っ越しできない「引っ越し難民」が大量発生することだ。
もう手遅れだが、いま予約を入れても満杯で、4月に引越しにできる可能性はほぼない。
そのため、いくつかの企業は転勤や単身赴任を夏にずらすなどの措置を取ったが、これは根本的な解決になっていない。
「バス路線減少マップ」に見る縮小ニッポン
すでに、ドライバー不足は、運送業界に限らずあらゆる業界を直撃している。
運転手が足りないため大型トラックを何台か売った。それでも運転手が集まらないので会社をたたんだという話をよく聞くようになった。帝国データバンクによると、2023年の人手不足倒産全260件のなかで、物流業がトップの約15%を占めた。次が建設業である。
ドライバー不足と人口減は、全国各地で「路線バス」を廃止・縮小に追い込んでいる。これまでは、それは地方の問題とされてきたが、最近は、都市部にも及び、東京近郊、大阪近郊でも毎年のように廃止・縮小が行われるようになった。
NHKでは、全国の「バス路線減少マップ」を作成し、サイトで公開している。
https://www.nhk.or.jp/minplus/0121/topic059.html
このマップを見ると、いかに日本が縮小しているかはっきりとわかる。ドライバー不足などと言っているうちはまだいいほうで、路線バスの廃止は人口減少をさらに加速させ、地域経済を確実に衰退・崩壊させていく。
都市部に及んできた鉄道インフラの縮小
路線バスと並んで深刻化しているのが、全国の鉄道路線の廃止と縮小及びダイヤの間引きだ。JR東日本は、昨年11月に初めて、利用者が極めて少ないローカル線25路線66区間の2021年度の収支を公表した。それを見ると、すべての区間が赤字で、赤字の総額は679億円。なかでも不採算がひどいのは陸羽東線で、100円稼ぐのに費用が2万31円もかかっている。
いくら鉄道は生活インフラと言っても、民間企業だから不採算路線が廃止・縮小されるのはやむを得ない。バスに代替しても、人口減が続けば廃止せざるを得ない。
ただこの問題が、いまや地方から都市部に広がってきていることを、最近は実感するようになった。
すでに首都圏の私鉄路線の一部では、ダイヤを改正して運行本数を減らす状況が発生している。コロナ禍により通勤・通学客が減少したことが、この状況に拍車をかけた。
運行本数だけではなく、始発や終電の時間も繰り上がった。
この状況が今後さらに加速すればどうなるか?
すでに起こっているところもあるが、郊外人口が減り、都心部への人口集中が起こる。いわゆる「都心回帰」である。
いま東京の不動産価格はバブル期を超えたが、それは一部であり、郊外および23区内でも価格が下がるところが今後続出する。
この続きは4月12日(金)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。
※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。
山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。