自民党の裏金問題、ウクライナ戦争、イスラエルーハマス戦争、モスクワ乱射テロ、米大統領選挙、選抜高校野球、尊富士110年ぶり新入幕優勝—–などのニュースを尻目に、連日大々的に報道されている「大谷スキャンダル」。
やはり、これを取り上げるしか、今週はないだろう。
そこで、日本でもスポーツベッティングを解禁すべきだということ書いてみたい。なにしろ、G7で解禁していないのは日本だけである。スポーツが巨大なビジネスになり、デジタルエコノミーが進展中なのに、「ギャンブル悪玉論」一辺倒のこの国は、まさにガラパゴスと言うほかない。解禁しなければ、経済損出ははかりしれない。
英国ブックメーカーが日本に上陸したころ
いまから30年も前の1992年、私は友人たちと『大儲けが止まらない: 何でもベッティング』(リム出版、1992年)という本を編集して出版した。これは、日本で初めてのブックメーカー攻略・解説本で、一部に熱狂的に受け入れられた。
当時、英国のブックメーカーは、巨大なギャンブル市場を持つ日本に目をつけて、日本で会員を募るためプロモーションに乗り出した。しかし、どうやって英国のブックメーカーにベットするのかと思ったら、当時やっと普及し始めたメール(当時まだ「電子メール」と呼んでいた)を使うという。
なるほどということで、多くのギャンブル好き人間が会員になった。なにしろ、日本向けメニューを豊富に揃え、プロ野球はもとより、競馬、相撲、テニス、陸上競技、駅伝、F1から、選挙、天気予報、紅白歌合戦まであった。
ただし、日本では法律により、国が認可したギャンブル(競馬、競輪、パチンコなど)以外は認められない。民間の業者(ノミ屋)を通して賭けることは違法だった。ところが、ブックメーカーは海外の業者。日本の法律の適用外なので、その行為はグレーゾーンということで、お目こぼしにするほかなかった。
驚くべきだが、この状況は、現在もほとんど変わっていない。日本は、G7でただ一国、オンラインによるスポーツベッティングを解禁していない。
かつては英国のみがブックメーカーを認可
現在、国が認可したブックメーカーにおけるベッティングは、ほぼすべての先進国で合法である。なぜなら、ネットの進展、スマホの普及で、情報、サービス、マネーは国境を超えて即座に移動するようになってしまったからだ。
そのため、国内でいくら禁止しても、賭けるということは人間の一種のサガだから、人々は海外のブックメーカーを通してギャンブリングをする。そうして、資金はどんどん海外に流出する。
1990年代から今日まで、いったどれほどのマネーが、日本から海外のブックメーカーに流れただろうか? 一説によると、これまで年間数千億円が流れてきたという。
ここ数年では、仮想通貨が浸透したことで激増しており、1兆円を超えたというレポートも出ている。賭け金だけに限ると、年間5兆~6兆円に上るとの推計もある。
私が前記した本を出した当時、英国のみがブックメーカーを公認していた。英国にはギャンブル文化の伝統があり、王室ゲーミング委員会は、ギャンブルが依存症にならない限り、人々の生活を活性化するということをデータに基づいて政府に提言。政府は、ブックメーカーを認可性にした。1960年のことだ。
ブック(book)とは、「台帳」のことで、ブックメーカー(bookmaker)は「台帳を記入する人」(日本語に当たるのは「胴元」)で、ブッキー(bookie)とも呼ぶ。
この続きは4月18日(木)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。
※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。
山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。