トランプもバイデンも結局同じか。 アメリカ覇権が後退し続ける混沌世界の到来(中)

バイデンは歳のせいか、弱気も弱気

 バイデンは、ときとして激しくプーチンを非難し、対ロシア強硬発言をする。しかし、そのバックのネオコンを排除してしまえば、今後、それは口先だけになるだろう。「私が大統領になれば即座にウクライナ支援をやめる」と言ったトランプと同じ路線になりかねない。オバマ、トランプとアメリカの世界覇権を弱め、世界を混沌とさせてきたが、バイデンもまたそうしよとしている。
 ウクライナにいつまでたっても、最大射程300キロの地対地ミサイル「ATACMS」や戦闘機「F16」を供与せず、制空権をロシア優位にさせているのを見ると、バイデンはただの臆病者にしか見えない。弱気も弱気で、戦争勃発当初から、プーチンの「核の脅し」に怯んでいる。年のせいだろうか。
 かつて、若きケネディはソ連の脅しにけっして怯まなかった。
 現在、ロシアは無傷のクリミアや領土内からウクライナのインフラを狙ったミサイル攻撃や航空機爆撃を繰り返している。モスクワでの大規模テロもウクライナと西側が関与したとして、プーチンは攻勢に出ている。

イスラエルの強硬姿勢で迷走するワシントン

 ネオコンを排除せずとも、バイデンはハナから優柔不断で、アメリカ覇権を後退させてきた。イスラエルーハマス戦争を見れば、これは歴然で、アクセルとブレーキの2本立て外交を行っている。
 イスラエルが、ガザ地区南部ラファへの地上作戦を行うと宣言したら、これを止めに入った。世論調査でイスラエルの軍事作戦を「支持しない」とした人間が55%を超えたため、人権と世論に配慮したからという。
 イスラエルーハマス戦争が起こってからというもの、ワシントンの迷走ぶりはひどくなった。3月18日、バイデンはネタニヤフに対しラファ作戦への懸念を表明し、それに替わる作戦を協議するために代表団の派遣を要請した。ところが、安保理の停戦決議で、アメリカが拒否権を行使しなかったためネタニヤフは怒り、代表団派遣を中止した。
 アメリカとイスラエルの関係からいって、こんなことは過去になかった。
 いったい、バイデンはどうしたいのだろうか? 
 自由、民主主義、人権、そして市場経済を守るには、それを重視しない勢力への法厳守の要請と交渉だけでは不可能である。バイデン外交は「抑止と協力の2本立て」と言うが、いったん始まった戦争においてそんなことが成立するわけがない。

ロシア優勢は表面だけで内実は異なる

 最近の西側と日本の報道を見ていると、ウクライナ戦争もイスラエルーハマス戦争も、即時停戦すべき。停戦はやむを得ないといった論調が目立つ。
 その理由は、ウクライナ戦争においては、ロシアが優勢であること、イスラエルーハマス戦争においては人権が顧みられていないことという。
 しかし、ウクライナ戦争におけるロシアの優位は、単に西側の支援が減っただけ。ロシアが勢力を増しているからではない。一部メディアは、ロシアへの経済制裁は効かず、ロシア経済は持ちこたえていると報道しているが、そんなことは見せかけにすぎない。
 プーチンはフェイク選挙で大統領になったとたんに、首都で反ロシアの大規模テロを起こされた。さらに、必死になってキーウやハリクウの攻略を目指そうと、新たに15万人を徴兵する大統領令に署名したが、各地で抵抗運動を起こされている。(つづく)

この続きは5月2日(木)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。
本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。

 

山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。

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