桜の満開が昨年より約2週間も遅くなる
4月7日の日曜、私が住む横浜は朝から薄曇り。天気予報では、午後には日も差すとあって、午前中から三渓園にお花見に出かけた。行ってみると、入り口にはすでに行列ができ、園内は大勢の人出で賑わっていた。
この日、横浜管区気象台は、桜の満開宣言を出したが、これは「平年より6日遅く、昨年より13日遅い」とのことだった。ちなみに、東京管区気象台の満開宣言は4月4日と横浜より早く、平年より4日遅く、昨年より13日遅かった。
今年の春は、本当に変な春だ。冷たい雨の日が多く(これを「菜種梅雨」と呼ぶ)、晴れたと思ったら気温は急上昇。3月31日には、全国各地で午前中から気温が25度以上の「夏日」となった。東京都心では午前11時45分ごろに26.7度を記録し、これは1876年に統計を開始して以来の3月の最高気温だという。
春をとおり越して夏かと思うと、気温が一桁の冬日も続く。本当に春らしい日は少なく、これが桜の開花、満開に大きく影響したのは間違いない。
全国各地で行われる「桜まつり」は、どこも3月最終週に行われるが、今年は延期されたところが続出した。
温暖化が進めば桜前線は意味がなくなる
地球温暖化は、フツーの認識だと、毎日が以前より暖かくなると考えられている。今年の春は寒い日もあったが、異例な夏日もあったので、全般的には暖冬だった。それなのになぜ、桜の開花・満開がこんなにも遅くなったのだろうか?
テレビの番組では、『温暖化と桜の関係』の研究で知られる九州大学名誉教授の伊藤久徳氏の解説がよく取り上げられていた。伊藤氏は、これまでの研究から、温暖化が進む2100年には、桜は関東から西日本にかけての広い範囲でほぼ同時期に一斉に開花し、地域差はなくなるという。桜前線が北上していくというような、これまでの常識は通用しなくなるという。
しかも、その開花日は2082~2100年の19年平均で3月25日~4月1日。これは、九州を中心に「開花しても満開にならない年がある地域」や「開花しない地域」が出現するからだという。
温暖化で桜の開花が早くなると思いきや、現実はまったく逆。むしろ開花が遅れたり、満開にならなかったり、開花そのものもしなくなるのだというのだ。
冬の寒さがないと桜はスムーズに開花しない
伊藤氏は、次のように言っていた。
「それは桜がきれいに咲くには『冬の寒さ』が必要だからです。桜の開花には、気温上昇など5つのプロセスがありますが、このうちの『休眠打破』(植物の眠りを打ち破り、成長させ、花を咲かせること)には冬の寒さが必要で、それがないとスムーズに進まないのです」
したがっての南九州などでは寒さ不足で休眠打破が進まず、開花が遅れたり、満開にならなかったり、開花しなかったりする地域が現れる。すでに、鹿児島など、そうなっている地域もあるという。
地球温暖化が進み、異常気象が起きることが、いまや「ニューノーマル」になった。ここ数年は、春や秋が極端に短く、暑すぎる夏と温暖化した冬が数か月続く「二季化」が起こっている。今年の桜の開花・満開の遅れは、日本から四季が失われようとしていることを、つくづく思い知らされた。(了)
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※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。
山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。