体外受精保険適用はゲイにはNO?
差別と男性カップルが市を訴え、全米初
ニューヨーク市の元地方検事補、コーリー・ブリスキン氏は9日、夫のニコラス・マッギピント氏とともに、男性同士のゲイカップルが代理母に託した体外受精(IVF)が市の健康保険の適用にならないのは差別だとして市を訴えた。 ブリスキン氏らの弁護士によると今回の訴訟は全米初のケースという。
訴状によると、不妊症の女性や女性をパートナーとしている男性の場合、IVFは市の健康保険の適用となる。男性同士のカップルでは不妊症であることを証明できないという理由で、健康保険の適用から除外されている。そのため、ブリスキン氏らはIVFの実施を遅らせざるを得なかった。2023年からプロセスを開始し、今年には代理母に受精卵を移す予定で、その費用は数千ドルかかるという。
ブリスキン氏が地方検事補だったのは2017〜22年。22年に雇用機会均等委員会(EEOC)に差別があると訴えたが、市が男性同士のカップルは保険適用の定義外と反論。今回はニューヨーク南部連邦地方裁判所に集合代表訴訟として訴状を提出した。市の政策は連邦雇用機会均等法、州法、市法、そして米国憲法に違反すると主張している。
21年時点で市職員は約30万人。120万人以上が市の保険に加入しており、数千人の男性同士のカップルが健康保険を使ってIVFを実施することができずにいる。ブリスキン氏らの弁護団の1人、ピーター・ロマー=フリードマン氏は「市に差別的な政策を転換させ、全ての市職員とパートナーがIVFにアクセスできるようにしたい」と話している。
市はこの訴訟に対するコメントの求めに応じていない。
一方、市議会には3月、不妊症であるか否かを問わず、IVFなどの生殖補助医療の費用の全て、または一部を健康保険でカバーするよう市に義務付ける法案が提出されている。成立すれば、不妊症であるかを証明できない男性のゲイカップルのIVFも保険適用となる。
米疾病対策センター(CDC)によると、21年、IVFによって誕生した子どもは全米で9万7000人。全体の約2%に上る。ただ、米国ではIVFのプロセスを規制する動きもある。アラバマ州最高裁判所は2月、凍結受精卵(胚)を子供とみなすとの判断を下し、州内の医療機関でIVFの実施が停止した。その後、3月には、IVFを実施する医療関係者などを保護する州法が成立している。(9日、ウォールストリート・ジャーナル)
CDCの生殖補助医療についてのホームページはこちら
https://www.cdc.gov/art/index.html