欧州も韓国も半導体に大規模投資を!
中国の大規模投資に対して、負けられないと投資しているのが、欧州と韓国である。
EUは、域内で生産する次世代半導体の世界シェアを20%以上にする目標を掲げている。この目標達成のため、2030年までに官民で合わせて430億ユーロ(約7兆円)の投資をすることを表明している。
DRAMで世界をリードするサムスン電子とSKハイニックを持つ韓国は、2026年までに約340兆ウォン(約38兆円)の投資をすることを決めている。
これに対して、日本政府は台湾のTSMCを誘致するなど、遅ればせながらも、半導体投資を開始した。今年度の補正予算で約1兆9000億円、昨年度の補正予算では約1兆3000億円を盛り込み、これまでに約4兆円近くの投資を決めている。
TSMCの2工場に合計1兆2080億円を援助
現在、熊本県菊陽町がTSMCの進出により“半導体ゴールドラッシュ”に湧いているのは、報道によってよく知られていると思う。不動産価格は高騰し、町の労働者の賃金も上がり、いまや菊陽町は日本一活気のある町になった。
TSMCは第一と第二の2つの工場をつくることになっていて、第一のほうはすでに起工式をすませている。この第一に対する投資額は約86億ドル(約1兆3200億円)で、このうち日本政府は最大で4760億円を援助する。
第二工場のほうは約115億ドルを投資するとされ、ここにも日本政府は補助金を出す。その額は最大で7320億円。第一、第二合わせて計1兆2080億円がTSMCに支給される。まだ、非公開情報だが、TSMCでは日本政府の援助があれば、第三工場をつくる計画があるという。
半導体企業の設備投資に軒並み援助
日本政府の半導体企業援助は、TSMCだけではない。以下のように、数社に及んでいる。
[ラピダス]
最先端の2ナノ以下の半導体を製造しようと新しく設立され、北海道千歳市に工場を建設中。2027年ごろの量産化を目標としている。政府支援額は最大で3300億円。
[キオクシア]
メモリー半導体の大手キオクシアは米ウエスタンデジタルと共同で、三重県と岩手県の工場で、7200億円あまりの設備投資を行う計画。ここに、政府は最大で2429億円を支給する。
[米マイクロンテクノロジー]
マイクロンは、次世代のメモリー半導体の開発や生産に向けて、広島県東広島市の工場を中心に約5000億円を投資する計画。政府は最大で2385億円を支給する。 このほか、台湾のPSMCもSBIホールディングスと共同で宮城県大衡村に8000億円を投じて工場を建設する計画だが、政府の援助額は決まっていない。
(つづく)
この続きは5月18日(金)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。
※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。
山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。