憲法改正論議は無意味!SF平和条約がある限り 日本は100年経っても独立できない!(下)

SF平和条約に日本語の正文が存在しない

 SF平和条約と日米安保が、日本国憲法の延長線上に結ばれたのは言うまでもない。
 SF平和条約が特異なのは、日本とアメリカを中心とする多くの連合国との間に結ばれたのに、日本語の正文が存在しないことだ。いま、私たちがSF平和条約として読んでいるのは、日本語の訳文であって正文ではない。
 正文は、フランス語、スペイン語の3言語で書かれたものだけである。
 英語正文には、次のように書かれている。
 “DONE at the city of San Francisco this eighth day of September 1951, in the English, French, and Spanish languages, all being equally authentic, and in the Japanese language.”
 この記述から読み取れるのは、英語、フランス後、スペイン語が“equally authentic”(等しく正式)であり、日本語文は付け足しとしてつくったということだ。

SF平和条約も憲法と同じく武力放棄を規定

 すでに私は、自著『永久属国論』や「Yahoo!ニュース」の寄稿、そしてこのメルマガで、何度かこのことを指摘してきた。日本語正文がないということは、日本は独立国家ではないということである。
 じつは、SF平和条約というのは、敗戦国の日本に日本人による「自治権」(administrative rights)と「施政権」(administrative rights )を認めたものに過ぎず、完全な「主権」(sovereignty)は認めていない。
 なぜなら、SF条約の第5条(a)の(i)(ii)は、日本国憲法と同じように、日本の武力行使を規定しているからだ。
《(i) to settle its international disputes by peaceful means in such a manner that international peace and security, and justice, are not endangered;》
(その国際紛争を、平和的手段によつて国際の平和及び安全並びに正義を危うくしないように解決すること。
《(ii) to refrain in its international relations from the threat or use of force against the territorial integrity or political independence of any State or in any other manner inconsistent with the Purposes of the United Nations;》
(その国際関係において、武力による威嚇又は武力の行使は、いかなる国の領土保全又は政治的独立に対するものも、また、国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎むこと。)

日本の教科書にある「日本独立」は間違い

 SF平和条約は、アメリカの意向によるアメリカとそれに従う国々による「日本との講話」であって、参加しなかった国も多かった。
 まず、毛沢東の中華人民共和国と蒋介石の中華民国のどちらが日本と交戦した当事国とするかで米英の意見が分かれ、中国共産党政権は参加しなかった。
 参加したのは52カ国(日本を含む)だが、ソ連、ポーランド、チェコスロバキアは参加したものの条約には調印せず、インド、ビルマ、ユーゴスラビアは出席を拒否した。
 つまり、サンフランシスコ平和条約は、ホンモノの「平和条約」(peace treaty)とは言い難いうえに、日本の“真の独立”を承認していない。
 したがって、日本の教科書の記述「(SF条約により)日本は独立を回復した」は間違いである。
(つづく)

この続きは5月29日(水)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。
※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。

 

山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。

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