GWの真っ只中だが、円安、インフレ、賃金安で行楽は低迷したまま。天候にも恵まれず、コロナ禍前とはまったく違うGWになっている。観光名所に行けば、楽しんでいるのは外国人ばかり。日本人は総じておとなしく、目立たない。
現在の日本人の暮らしは、以前よりはるかに落ち込んでいる。そして、このままGWが明ければ、さらに落ち込むことは確実だ。
増税と空前の値上げラッシュが暮らしを直撃するからだ。すでに、日本はスタグフレーション(不況下のインフレ)にあるが、この先、不況がさらに深刻化するのは確実だ。
ホテル代がコロナ禍前の2倍に高騰
今年のGWは、最長で10日間と長く、新型コロナ5類移行後初のGWとあって、コロナ禍前の盛況が戻ってくるのでは期待された。しかし、まったく盛り上がっていない。
盛り上がっているのは、有名観光地を訪れるインバウンド外国人と、一部のノーテンキなテレビ報道だけだ。
なにしろ、ホテル代が一気に高騰した。
東京、箱根、京都、大阪などのラグジュアリーホテルだと、1泊1室15万円を超えるのが珍しくなくなった。新宿のパークハイアットは約20万円だ。これはコロナ禍前の1.5倍から2倍である。
ビジネスにも行楽にも人気があるコンパクトシティホテルのドーミーインも、平均客室単価は1万5000円を超えた。そのため、人気観光地のホテルは、どこも外国人観光客ばかりになった。ラグキュアリー系は欧米富裕層観光客、シティホテル系はアジアからの観光客といった具合で、どちらも日本人の姿は少ない。
外国人と日本人の観光2極化が進む
では、日本人はどこへ行ってしまったのか?
日本人で盛況なのは、都市近郊のテーマパークや大型ガーデン、アウトレット、娯楽施設、キャンプ場などである。物価、ホテル代、旅行代の高騰が庶民の財布を直撃したため、遠出や宿泊旅行が減ったからだ。宿泊旅行と言っても、せいぜい2泊3日がいいところで、それも近場が多くなった。
このGWでもっとも観光客数が伸びたのは、北陸新幹線が伸張した「恐竜王国」の福井県だという。福井県以外の数県をのぞいて、観光客数は減少している。
このように、外国人と日本人で、観光は「2極化」してしまった。私の住む神奈川県で言えば、横浜みなとみらいの高級ホテル、箱根の高級旅館は外国人だらけ。ミシュランクラスのレストラン、高級寿司店も外国人ばかり。日本人は、丹沢や相模湖のキャンプ場でバーベキューキャンプ、街ではファミレスや居酒屋で飲食といった具合だ。
一方、海外旅行は昨年比で9割回復というが、行き先は韓国、台湾など近場が中心。円安で欧米旅行は減り、聞こえてくるのは「ランチが1万円も!」という悲鳴の声ばかりになった。結局、旅行を楽しんでいるのは外国人で、日本人は楽しむどころか格安探しで疲れ切っている。
この状況は、完全な後進国状態。たとえば、アンコールワットがあるカンボジアと同じと言っていい。
(つづく)
この続きは5月31(金)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。
※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。
山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。