GW明けから大不況に! 増税、値上げラッシュが国民生活を直撃する!(完)

値上げラッシュは7月以降も続く

 このような増税と同時に進んでいるのが、インフレ。すなわち、物価上昇、値上げだ。すでに4月から、多くの食品が値上がりした。統計によると、4月に値上げした主要な食品メーカーは195社で、品目は2806点である。
 この値上げラッシュは、6月まで続き、さらに第二四半期になる7月にはもう一段の値上げラッシュがやってくる。これまでの報道を集計した試算では、今年1年間の平均値上げ率は約20%になるという。
 しかし、これは円がまだ150円での話で、160円、170円となれば、もうとめどもない値上げラッシュとなるだろう。現在の混沌する世界情勢で、原油や資源、農産物の供給が滞っていることを考えると、円安による値上げだけではすまない。

「もう始まっている公共料金の値上げ

 こうした値上げに追い打ちをかけるのが、電気ガスなどの公共料金値上げだ。すでに、4月から電気代の値上げが始まっており、5月には、「再生可能エネルギー発電促進賦課金」(温暖化対策)による値上げが始まる。
 これに、これまで行われてきた「電気ガス料金の負担軽減措置」が 5月でいったん終了する。これまで、政府はキロワットアワー当たり、家庭向けでは3.5円、企業向けでは1.8円を補助し、都市ガスについても家庭や年間契約量の少ない企業を対象に、1立方メートル当たり15円を補助してきた。これらが打ち切られるのだ。
 一方、ガソリン価格を抑えるための補助金は、当面延長されることになったが、それはクルマを持っている人たちだけに対する援助にすぎない。ただ、いくら援助しても、原油価格が高騰すれば焼き石に水だ。
 春闘では多くの企業が政府の圧力で賃上げさせられ、大企業は5%超を達成したが、こうした値上げによって、それらはすべて水の泡と消えていく。

日本政府はインフレ阻止を怖くてできない

 年 もはや、日本経済の現状は、単なるインフレではなく、スタグフレーションである。GWが明ければ、それがはっきりと目に見えてくるだろう。外国人観光客の高額消費との落差を嫌というほど感じさせられた後にやってくるのは、社会の虚脱感である。それが、どれほどになるのかは、スタグフレーションの進行具合による。
 ここで消費者物価指数を振り返ると、2022年が3.0%、2023年が2.6%だった。しかし、今年はその程度ではすまなくなるのは間違いない。インフレを抑制するには金利を上げるのがいちばん。上げれば円安も歯止めがかかる。しかし、日銀は「インフレではない」と強弁し、いまだにデフレ脱却などと言っているから話にならない。
 ただし、いまの日銀はインフレ率に見合う利上げをできない。日銀を含め政府全体が、緩和をやめて利上げに踏み切ることが、怖くてできないでいる。もしすれば、企業倒産、住宅ローン破綻などが続出するからだ。
 そして、なによりも莫大な国債残高を抱えた政府が利払い不能になって予算逼迫、財政破綻の危機に陥る。
 インフレはそれが何%であろうと税金を払っているのと同じだ。よって俗に「インフレ税」と呼んでいる。誰一人逃れられない恐ろしい税金だ。インフレは通貨の価値が下落することと同義なので、借金を持っている人間がトクをする。日本の場合、もっともトクをするのは莫大な債務を持つ政府だ。だから、政府は景気をよくしよう、インフレを抑えこもうなどとは思わないのだろう。
 このままスタグフレーションが進行すれば、政府債務は目減りするうえ物価上昇で税収も増加する。しかし、一般国民の生活は困窮を極めることになる。
(了)

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山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。

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