政局に関しての予想記事は、政治記者の主戦場だ。これを見事に当てて一人前とされる。しかし、いまほど政局記事が難しいことはない。先がまったく読めないからだ。
そこで、いまも根強くある「6月解散、7月総選挙」説を検証し、もしそうなったら、そのときなにが起こるのか? 日本の政治・経済はどうなるのか?を考えてみたい。
私の予想では、なにがあっても日本が改革・再生されることはない。自公政権が続こうと、野党連立政権ができようと、なに一つ変わらず、日本の衰退は加速する。
あらゆる状況が「解散なし」を示している
自民党は、大方の予想通り、先の衆院3補欠選挙で不戦敗を含めて全敗した。とくに、「保守王国」である島根1区では、完敗と言っていい負け方だった。
そのため、解散・総選挙など、もはやできようがないという見方が一気に広がった。実際、選挙後に解散について聞かれた岸田文雄首相は、「まったく考えていない」と言い切った。
今後、国会は、政治資金規正法の改正に関する本格的な論議に入る。示された自民党案はザル法案だから、難航は必至。また、内閣支持率もどん底は脱したものの、低迷を続けている。
さらに、裏ガネ問題に怒った公明党は、山口那津男代表が「(なによりも)信頼回復が当面重要だ」と、解散には全面的に反対の姿勢を示している。
したがって、現状からは、9月の自民党総裁選で岸田退陣、その後、総選挙というシナリオしかない。しかし、そうとは言い切れないという見方もある。
超楽観、鈍感の首相だけにやり兼ねない
自民党幹部の一人は、「岸田は総裁再選、続投を簡単に諦めるような男ではない。このあと、政治資金規正法で野党案を飲み込み、6月実施の定額減税をバネにして、起死回生の解散に打って出るかもしれない。彼ならやり兼ねない。サプライズが好きだからね」と言う。
「しかし、解散したら自公過半数割れで、政権交代まであるのでは?」と聞くと、「いや、彼は超がつく楽観、鈍感男男だから、やり兼ねないのだよ」と言うのだ。
確かに、先の訪米で、バイデン大統領から国賓という厚遇を受けて上機嫌になり、さらに、連邦議会でのスピーチが好評だったことで舞い上がっているので、解散・総選挙の可能性はないとは言えない。
この幹部は、さらに次のように続ける。
「考えられるのは、6月13〜15日のイタリアG7サミット後だ。『外交の岸田』と言われるのがお気に入りで、本気でそう思っているから、いくら周りが止めようとやるんじゃないかな」
6月23日に、今国会は会期を終える。その直前に野党側が内閣不信任案を出すことも考えられている。それもあって、現在、岸田首相の頭のなかは、会期末解散であるという。となると、「6月25日公示、7月7日投開票」という案が有力で、ここで、日本の政治・経済は“激動”することになる。
解散したら自公は過半数割れで下野は確実
そんなこんなで、すでに一部のメディア、与野党ともに総選挙になった場合の票読みのシミュレーションを始めている。それによると、ほぼどの調査も「自公過半数割れ」で、岸田政権は崩壊することになっている。
政治評論家の野上忠興氏が『日刊ゲンダイ』紙上で公表した最新の予測では、「自公で81議席減の207、立憲161(63増)、維新58(17増)、共産11(1増)—–」(過半数は233)となっており、自公の敗戦は確実だ。
政権交代が起きた2009年の総選挙では、自民党は小選挙区で9.09%、比例で11.45%得票数を減らしている。これを今回に当てはめると、この予測はかなり妥当な線である。
そこでここからは、自民党で誰が落選するのか、落選の可能性があるのか、注目の選挙区を見ていきたい。
(つづく)
この続きは6月6日(木)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。
※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。
山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。