野党側にハードランディングする勇気なし
総選挙で、与野党逆転。立憲民主などの野党側が勝ったとしても、それは自民党が裏ガネ問題、統一教会問題、円安インフレによる経済失政などで勝手にコケたにすぎない。
よって、立憲中心の連立政権となっても、なにも変わらない。
すでに日本は詰んでおり、どんな手を打っても、衰退は免れない。その衰退をダラダラと坂道を転げるようにやっていくか、一気にやってしまうかの違いしか考えられない。
これまで自民党がやってきたのは、国債増発による借金財政で衰退をごまかすダラダラ路線である。補助、援助、優遇措置のバラマキを「政策」と称して続けてきただけである。保守と言いながら、これは明らかな大衆迎合による社会主義路線だ。
したがって、野党が政権をとっても同じことしかできないはずだ。もう日本の債務は天文学的で、これを背負って真っ当な経済・金融政策ができるわけがない。
ただ、立憲などの野党側は、現在のメディアや評論家、国民の声に応えようと、消費税減税、日銀の緩和手仕舞いによる利上げぐらいは実行するかもしれない。
しかし、そんなことをすれば、企業倒産、住宅ローン破綻が続出するうえ、たちまち国家予算が組めなくなる。それでも、これを実行し、大幅な緊縮による小さな政府をつくれば、日本復活の目はある。
といっても、彼らは怖くてこれができないだろう。そればかりか、ハードランディングがなにを意味するかさえわからないだろう。
リベラルは大衆迎合のポピュリズムと変わらないから、自民以上のバラマキをしかねない。
アベノミクスの大失敗を総括できるのか
政権交代が起ころうと起こるまいと、新政権がやらなければならないのは、これまでの日本の経済政策、とくにアベノミクスの歴史的大失敗の検証だ。これをなくしては次に進めない。
私は、アベノミクスが始まった当初から、これを「間違っている」と批判してきた。異次元緩和という金融政策はカンフル剤で長くやってはいけない。それだけでは経済成長など望めない。2本目、3本目の矢を真剣にやらなければ、日本はさらに凋落すると警告してきた。
しかし、保守メディアと右派言論人、エコノミストの多くが、アベノミクスを擁護し、「日本経済は復活した」などと戯言を並べてきた。
いまの日本の産業構造で、円安などあってはならないのに、アベノミクスは事実上「財政ファイナンス」(日銀に国債を引き受けさせる)で予算を拡大し続け、効果のないバラマキを行ってきた。
こんな世紀の愚策はない。それなのに、批判されると、「悪いのは財務省」という「財務省悪玉論」を世に広めた。ついこの前まで、アベノミクスに乗っかる報道ばかりしてきたマスメディアにも責任はある。はたして、メディアも含めて、アベノミクスの大失敗の検証ができるだろうか?
「戦犯」を断罪し、政府、官僚組織から追放せよ
かつて私は、『Yahoo!ニュース』に、アベノミクスの裏目的という主旨のコラムを寄稿した。
アベノミクスというのは、単なる政府の延命策で、その本当の目的は金利を押さえ込んで赤字国債の発行を続けることに過ぎないという内容だ。したがって、景気をよくしてインフレにし、金利を上げてはいけないのである。
つまり、アベノミクスは「財政ファイナンス」そのものだから、最終的に破綻する。しかし、破綻してもインフレが止まらなくなるだけだから、債務は圧縮されて政府は助かる。しかし、国民のほうは助からない。
つまり、これを推進した「戦犯」を断罪し、政府、官僚組織から追放しない限り、次の政権は改革などできない。単に裏ガネによる政治腐敗を撲滅したところで、日本はよくならない。
しかし、新政権はこれをできないだろう。失敗確実の「大阪万博」は開催され、まったく無意味のリニア新幹線の工事は続き、役に立たない兵器に無駄な税金が際限なく投入されるだろう。
日本は、デジタルエコノミーにも、温暖化経済にも大きく遅れ続けるだけだろう。
混乱に陥ったときにポピュリズムが台頭する
いずれにしても、7月からの第二四半期で、間違いなく本格的なスタグフレーションに突入する。それはこれまでの比ではない。現在の円安150円〜160円の影響が本格的に物価に波及するのは、3、4カ月後だからだ。そして、秋には値上げラッシュ、円安倒産ラッシュが訪れる。
これは金融緩和を手仕舞いしなくとも、確実にやってくる未来であり、緩和を手仕舞いすれば、一時的にもっとひどいことになる。そのため、この先、日本政府がやりそうなことは、国民救済のためのさらなるバラマキだ。
国家が経済混乱、貧困化に陥ったとき、ポピュリズムが台頭する。自民にしても立憲、維新にしても、私に言わせれば、その正体は大衆迎合のポピュリズム政党である。けっして、国民に対して「痛みを受け入れなければ未来はない」とは言わない。
新政権は、国民を救うと称して、さらなるバラマキを行うのは間違いない。財政赤字を垂れ流している政府に財源などないから、さらなる国債発行でバラマキをまかなうしかない。そんなことを続ければどうなるか? 日本の壮大な社会実験の結末が迫っている。
(了)
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山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。