「愛子天皇」は「待望論」だけで終わるのか? 日本復活のためには女性天皇が必要!(上)

 6月末の国会会期末に向けて、皇室をめぐる与野党間の協議が始まった。まとまれば、皇位の安定継承に向けた皇族数の確保ができるようになる。しかし、根本問題である「女性・女系天皇」につながる皇位継承問題は封じ込められたままだ。
 ここにきて、「愛子天皇」を熱望する国民の声が高まっているというのに、ほぼ無視されていたと言っていい。このままで、女性天皇は誕生せず、日本はますます輝きを失っていくだけだろう。

「愛子天皇熱望」ムードのなかの国会論議

 各種世論調査で「女性天皇容認論」(≒愛子天皇熱望論)が高まっている。先月、4月28日に発表された共同通信の調査(18歳以上の男女3000人が対象)では、女性天皇を認めるという意見がなんと90%に達した。
 また、今月 18、19の両日に毎日新聞が実施した世論調査では、女性天皇に賛成が81%に上り、反対は10%にとどまった。
 そんななか、国会では皇室をめぐる問題に関して、与党案を中心に与野党協議が始まっている。17日に衆院議長公邸で開かれた各党代表者による会議後、額賀福志郎衆院議長は記者会見でこう述べた。  
「今日から立法府の総意としての意見集約に向かうスタート台に立ったところだ」
 ただし、協議の中心は、減少の一途をたどる皇族数の確保をどうするかで、女性・女系天皇を含めた皇位継承問題ではない。
 額賀議長は今国会の会期中(6月23日閉会)の取りまとめを目標とするというが、はたして約1カ月で合意形成ができるだろうか?

「男系男子」が継承という規定が危機を招く

 では、今回の与野党協議にいたるまでの経緯と、なぜ、女性・女系天皇論が封印されたのか、振り返ってみることにしたい。
 まず、問題の根幹には、天皇家に長い間、男子の皇位継承者が誕生しなかったことがある。明治時代に定められた「皇室典範」は、皇位は「男系男子」が継承し、皇族女子は一般男性と結婚すれば皇籍を離れると定められているからだ。
 現在、皇室は17人で構成され、皇位継承資格を持つ男性皇族は3人である。皇位継承順位は、1位が「皇嗣」(こうそ)となった秋篠宮文仁・親王(58歳)、2位が秋篠宮さまの長男の悠仁(ひさひと)・親王(17歳)、3位が上皇陛下の弟の常陸宮正仁・親王(87歳)となっているが、次世代に限れば、悠仁・親王だけである。
 未婚の女性皇族は、今上天皇・徳仁陛下(64歳)の長女・敬宮愛子・内親王(22歳)を含むわずか5人で、結婚すればみな皇籍を離れることになる。
 つまり、悠仁・親王まではいいとして、もし、悠仁・親王に男子が誕生しなければ、男系男子の皇統は途切れることになる。また、女性皇族は結婚すれば皇籍を離れるので、近いうちに1人もいなくなってしまう可能性が高い。

悠仁親王の誕生で女性天皇はたち消えに!

 この皇位継承問題、皇族数の減少問題は深刻で、これまでさまざまに議論されてきた。小泉純一郎政権では、皇室典範に規定された男系男子継承の規定を改正する準備を始め、有識者会議を設置した。この有識者会議は、天皇および女性天皇の第一子は性別にかかわらず皇位を継承すべきという改正案をまとめた。
 しかし、2006年に日本の皇族で41年ぶりの親王となる悠仁・親王が誕生すると、この改正案はあっという間にたち消えになった。
 もちろん、その後も、女性・女系天皇を容認するかどうか?女性皇族をどうすべきか?という議論は続いたが、自民党は、皇位継承問題はいったん解決したとして、女性・女系天皇論を封印してしまった。
 とくに、安倍晋三政権時代は、首相本人及び保守勢力が、男系男子へのこだわりが強く、政府内では議論すらされなかった。
 こうして、2019年に、現上皇である繼宮(つぐのみや)明仁・陛下は85歳で、当時皇太子だった長男の徳仁・親王に天皇を譲位した。これに伴い、前記したように、皇位継承は、次男の文仁・親王の秋篠宮家に移ったのである。
 その結果、いま残ったのが、女性皇族の離脱を防いで、さらに皇族の数を増やすという今回の改正案なのである。
(つづく)

この続きは6月25日(火)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。 

※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。

 

山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。

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