第12回 小西一禎の日米見聞録 さぁ夏休み、旅行先はこう選ぼう! 


第12回 小西一禎の日米見聞録

さぁ夏休み、旅行先はこう選ぼう!

こちら関東地方は6月21日、平年より2週間遅い梅雨入りとなった。ジメジメする東アジア特有の梅雨期間が、少しでも短くなるのであれば喜ばしい限り。片や、春を飛び越し、冬から一気に夏に移行するニューヨークからは猛暑の声が聞こえてくる。

夏と言えば、やはり旅行。長期休みを迎えた子どもたちは、サマーキャンプなどを満喫しているだろう。この6月で、3年3カ月の在米日数期間を超え、帰国してからの時間の方が長くなった我が家だが、旅行の記憶は楽しい思い出として刻まれている。

 

子どもの休みを中心に予定組む

いずれは本帰国する日が訪れる駐在ファミリーにとって、かけがえのない米国生活における旅行は、しっかり戦略や計画を立てて臨みたいところ。滞在期間が限られた中で、「あっちも、こっちも行きたい」と欲張りたいが、優先順位を付けたい。

では、数多く散らばる魅力的な観光地の中から、どこを選ぶか。家族旅行担当を務めた私は、①日本からは行きにくいエリア②日本では経験できないことができる③懐が痛んでも、無理してでも行く―との観点から、旅行先を絞った。その上で、夏や春、冬の長期休み、サンクスギビング、さらには3連休を抽出し、向こう3年間の計画をアバウトに立てたのを思い出す。全ては、子どもの学校日程を中心に考えた。現地校を長く欠席すると、最悪、除籍されかねないためだ。七五三による一時帰国で、2週間ほど学校を休んだところ、地元の教育局から「通告メール」が届いた。

一時帰国との兼ね合いは、悩ましい問題だ。平日欠席を避けるとなると、どうしても長期休み中の一時帰国となる。太平洋を渡って遠路はるばる辿り着いた母国・日本には、安価で美味しいグルメ三昧、コンビニ、温泉などが待ち構える。親や友人・知人との再会も大切にしたい。「日本にも長く滞在したいが、米国を拠点に旅行もしたい」ということで、悩む人も少なくないのではないだろうか。

 

残念だった旅行先は?

さて、2017年末の渡米後、飛行機での初旅行先は、アラスカを選んだ。東海岸から最も遠い大陸州であり、5歳、3歳(いずれも当時)の子どもたちを早いうちに長時間フライトを経験させれば、その後はどこに行っても近く感じるだろうというのが私の作戦。日系エアラインに比べると、米系エアラインの機内アクティビティーは限界がある。渡米初期に「免疫」をつけさせて、大正解だった。

アラスカ鉄道が走り抜ける針葉樹林の壮大さ、野生のムース(ヘラジカ)やクマが駆け回るデナリ国立公園、真夏の日の入りは午後10時半など、日本では経験できないことを積み、収穫ある「旅育」となった。

旅行前には、ガイドブックで研究を重ねるとともに、クレジットカード大国ゆえのカードベネフィットを有効に活用した。年会費無料のカードに入会するだけで、75000ポイントなどがもらえ、そのポイントを航空券やホテル代などに充てられる。こんな利便性の高いメリットをどんどん使いこなすべきだろう。

翌年の夏旅行は、グランドサークルをキャンピングカーで1周した。グランド・キャニオンの絶景、「フォレスト・ガンプ」や「駅馬車」などの名画が撮影されたモニュメント・バレーの奇岩、映画「カーズ」の世界観が展開するルート66、降り注ぐ太陽光が幻想的な光景を生み出すアンテロープキャニオンなど全てが印象深い。ただ、車内での時間が長く、子どもの感想は「岩ばかりの景色でつまんない」。

他に訪れたのは、フロリダ・ディズニーワールドのほか、出入国手続きが容易なバハマ、東海岸から至近なアイスランドなど。私の趣味に走ったグランドサークルの反省に立ち、子どもが楽しめることを優先した。

一方、残念な旅行だったのは、ハワイだ。知人の結婚式参加が主目的だったのだが、所詮は国内旅行に過ぎず、ターゲットやファストフードなど普段から利用している店舗を見て、日々の生活を完全に思い出してしまった。初めてハワイを訪れたなら新鮮さもあっただろうが、日本から何度も行っており、ワクワク感は皆無。ハワイを楽しめないというのも、また貴重な経験となった。

ナイアガラやワシントン、ボストン、北部メイン州などのロードトリップでは「アメリカの広さ」を実感できた。高速道路に乗れば、カーブが多く渋滞が目立つ日本と比べると、米国では同じ時間走っても、より遠くまで行ける。最後の1年はコロナ禍に見舞われ、計画した南米やキーウェスト、ディズニークルーズが全て吹っ飛んだ。

子どもがお世話になったNY育英学園の家族同窓会が8月初旬、東京で久々に開かれる。懐かしい人たちとの再会時、私も含め、旅行の思い出もネタになることだろう。

 

 

小西 一禎(こにし・かずよし)
ジャーナリスト。慶應義塾大卒後、共同通信社入社。2005年より政治部で首相官邸や自民党、外務省などを担当。17年、妻の米国赴任に伴い会社の休職制度を男性で初取得、妻・二児とともにニュージャージー州フォートリーに移住。在米中退社。21年帰国。コロンビア大東アジア研究所客員研究員を歴任。駐在員の夫「駐夫」として、各メディアに多数寄稿。「世界に広がる駐夫・主夫友の会」代表。専門はキャリア形成やジェンダー、海外生活・育児、政治、団塊ジュニアなど。著書に『妻に稼がれる夫のジレンマ~共働き夫婦の性別役割意識をめぐって』(ちくま新書)、『猪木道~政治家・アントニオ猪木 未来に伝える闘魂の全真実』(河出書房新社)。

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