「愛子天皇」は「待望論」だけで終わるのか? 日本復活のためには女性天皇が必要!(完)

天皇制はなぜ長く続いてきたのか?

 なんだかんだと言っても、天皇制と天皇は、私たち日本の国のかたちそのものである。いくら民主国家とはいえ、これをなくしたら日本は日本でなくなる。それは、いくつかの欧州国家がそうしているのと同じだ。英国王室がなければ英国は英国とは言えない。
 日本の保守が誇るように、天皇制は、王朝としては世界でもっとも長く続いてきた王朝である。これを続けていくのは、言うまでもないが、考慮しなければいけないことがある。それは、いまの保守が主張するような天皇制は、明治になって誕生・強化されたということだ。
 万世一系とされる天皇は、長い日本の歴史のなかで、常に政治権力の中心にいたのではない。そうだったのは、大和朝廷が成立した後、7世紀の後半の天智、天武、持統の時代を経て、平安中期までである。それ以後は、後醍醐天皇にしろ、後白河法皇にしろ、政治権力を握ろうとするとみな失敗している。つまり、天皇制は、天皇が政治権力を持たなかったため、ここまで続いてきたのである。
 天皇としての権威をもっともうまく利用したのが、明治政府をつくった薩長だろう。彼らは、王制復古から立憲君主国家をつくり、その中心に天皇をもってきた。
 当初、「尊皇攘夷」を唱えた彼らは、薩英戦争と下関戦争で、欧米列強に惨敗し、「攘夷」は無理だと悟った。
 その結果、残ったのが「尊皇」だった。このことが、第二次大戦で敗れても、今日まで日本で続いてきたと言っていいと思う。

決定的なのは秋篠宮家への嫌悪感

 さて、このように歴史的に「女性・女系天皇」論を考えてみれば、今後も憲法にあるような天皇制を守っていくべきだと思う。
 すなわち、「日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であって、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基づく」(第1条)と「皇位は、世襲のものであって、国会の議決した皇室典範の定めるところにより、これを継承する」(第2条)である。
 つまり、「日本国民の総意」なら、それは「愛子天皇」ということになる。女系を認めるかどうかまでは、取りあえず保留し、女性天皇としての愛子天皇が即位できるように、皇室典範を改正すべきではないだろうか。
  ここで、お行儀のいいメディア、評論家が言わないとをズバリ書いてみたい。それは、世論調査の結果で明らかなように、誰もが女性天皇=愛子天皇を望んでいるのでは確かだが、それ以上に、秋篠宮家の父子に天皇になってほしくないと願っていることだ。
「愛子さまには気品がある。しかし、眞子さま、佳子さま、悠仁さまには—–」というソーシャルメディアでの書き込みが、それを物語っている。

2045年前後までは、問題を先送りできる

 さて、このままでは、「愛子天皇」は誕生しないのは間違いない。政権交代が起こり、自民党案が葬り去られ、新しい皇室典範改正法ができないかぎり、それは無理だ。
 そこで、今後のことを予想してみると、今回の案が承認されれば、取りあえずはなにも起きない。この次に、皇位継承についてなんらかの議論が起こるのは、敬宮愛子・内親王、秋篠宮佳子・内親王、秋篠宮悠仁・親王がそれぞれ結婚され、お子さまできるかどうかという段階になってからだろう。それは10年〜20年先か。
 もし何事も起こらず、20年後までこのままだと、現天皇・徳仁陛下は、上皇・明仁陛下が譲位した年齢と同じ85歳になる。それは、2045年前後のことだ。そのときは、やはり、秋篠宮文仁・親王に譲位し、その後、秋篠宮悠仁・親王へと、皇位が継承されていくことになる。
 そうして、もし、悠仁・新天皇に男子ができなかった場合にかぎり、次の天皇を誰にするか、皇嗣を決めなければならない。それは2045年前後からさらに20年後ぐらいのことになるのではなかろうか。
 はたして、そのころの日本はどうなっているのだろうか? 確実に言えるのは、人口推計では、2050年前後に1億人を割るのので、9000万人前後の人口の国になっているということだ。
(了)

この続きは7月1日(月)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。 

※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。

 

山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。

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