ケネディJr.登場も盛り上がらない大統領選。 このままだとトランプ再選。その先には「内戦」も?(下)

ケネディJr.も高齢のうえ麻薬で逮捕暦が

 「バイデン対トランプ」のシラケムードに、一石を投じると注目されているのが、第3の候補の筆頭とされる弁護士のロバート・ケネディJr.だ。名門ケネディ家、あの大統領の弟で元司法長官のロバート・ケネディの息子だけに、メディアも大きく取り上げるようになり、最近の各種世論調査では10%前後の支持率を得ている。
 ただし、ハーバード大学、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスを経てバージニア大学のロースクールでJD(法務博士号)を取得し、環境問題を専門とする弁護士として活躍と、経歴的には申し分ないが、なんといっても70歳と高齢であることが難点とされる。
 さらに、若いときに麻薬での逮捕歴があることも、眉をしかめられている。
 ロースクール卒業後の1982年、ニューヨーク州マンハッタン地区検事局に入局したが、司法試験に失敗し、ヘロイン、大麻に溺れて自分を見失っているのだ。その後、復帰して水質・大気汚染問題に取り組み、大企業・官庁を相手取って訴訟を起こして実績を積んできたが、その間、3回結婚し2回離婚している。
 現在の妻は女優のシェリル・ハインズ(58)。子供は6人にいる。

なぜ、アメリカ人は陰謀論が好きなのか

 ケネディJr.の最大の難点は、陰謀論者であることだろう。トランプもそうだが、なぜ、アメリカ人は陰謀論が好きなのだろうか?
 支持者からは、親しみを込めて“ボビー”の愛称で呼ばれているが、これまで「CIA には米国の選挙を不正操作してきた」「NWO(New World Order:新世界秩序)の議題にしたがうことを拒否する指導者は殺される」などと述べてきた。ケネディ大統領の暗殺もCIAの仕業と主張してきた。
「NOW」といい、「Qアノン」といい、「ディープステート」といい、そうした人々が本当に世界を思い通りに支配しているとしたら、そんな世界には誰も住みたくない。しかし、そのような証拠はどこにもない。
 ケネディJr.は、新型コロナパンデミックの渦中で、ワクチン接種の反対運動を展開した。「新型コロナは明らかに生物兵器」「ワクチンは安全ではない」と、集会やユーチューブなどで言い続けた。彼は元からアンチ・ワクチン人間で、「小児用ワクチンが自閉症の原因になっている」などとも発言してきた。

「寄生虫が脳を食べた」「副大統領に打診された」

 「ニューヨーク・タイムズ」紙(NYT)は、5月8日、ケネディJr.が、かつて医師から脳に寄生虫の死骸があるとの診断を受けたと報道した。「Neurocysticercosis」(神経嚢虫症)というこの感染症は、てんかん、記憶障害を引き起こすという。
 ケネディJr.は、2012年の離婚訴訟で提出した宣誓証言で、この感染症の可能性を明らかにしたという。このとき彼は、収入が減った理由として「短期、長期の記憶喪失が影響している」とし、医師から「寄生虫が脳に入り、一部を食べ、その後死んだ」と診察されたと説明した。ただ、NYT紙は専門家の見方として「寄生虫は通常脳を食べることはない」と解説している。 
 こんな報道がされるのも、彼の主張、言動が、「どこか変」と思われているからだろう。
 ケネディJr.は、昨年の春、民主党大統領候補を決める予備選に立候補したが、10月になって民主党を離脱した。その後、無所属候補として、全米各地で集会、会合を開いて、支持者獲得に奔走してきた。
 そんななか、先月、突然「X」(旧ツイッター)に、トランプからランニングメイト(副大統領候補)になることを打診されたが拒否したと投稿した。
 これに対し、トランプ陣営の関係者は、「あなたは左翼の愚か者であるから、(トランプ氏から)打診されることなどありえない」と否定した。
(つづく)

この続きは7月5日(金)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。 

※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。

 

山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。

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