「世界は多極化する」は“戯言”AI革命で「アメリカ世界覇権」は揺るがない! (上)

この記事の初出は2024年6月4日

 いまの日本は、世界のトレンドにまったく遅れている。とくに政治家は、ひどい。今後、この世界がどうなっていくのか、まるでわかっていない。
 「生成AI」が登場して以来、世界は新しい次元に入った。人類とAIが共生する時代の到来だ。つまり、いまものすごい勢いで進展する「AI革命」に乗り遅れると、国家と国民の未来はない。
 もちろん、この「AI革命」をリードしているのは、間違いなくアメリカである。「アメリカは衰退する」「世界は多極化する」などと、いまだに寝言をほざいている評論家がいるが、彼らは日本の政治家と同じで、まったく世界が見えていない。
 「AI革命」により、アメリカの世界覇権は今後も揺るぎなく続く。

最新モデル「GPT-4o」の登場で確信に!

  いっとき、私も多くの論者と同じように、アメリカの「覇権」(へジェモン)が衰えて世界が多極化すると考えた。しかし、新型コロナのパンデミックが終わり、「Chat GPT」のような生成AIが登場して、それは誤りだと気がついた。
 欧州ではウクライナ戦争が泥沼化し、中東ではイスラエル・ハマス戦争が起こり、中国の拡張主義・戦狼外交も続いている。そんななか、グリーバルサウスが力をつけているのを見れば、もう誰もがアメリカの覇権は終わったと考えるだろう。
 しかし、それは地政学に偏った見方にすぎない。いま、素直にこの世界を見れば、そうではないことに気がつく。
つい先日、「Open AI」が生成AIの最新モデル「GPT-4o」を発表し、そのデモを見て、私の考えは確信に変わった。
 アメリカ1極世界は揺るぎない。この先も、アメリカの世界支配は続いていくのだと——。

「汎用人工知能」(AGI)に一歩近づいた

  「GPT-4o」の衝撃は、いま、世界中に広がっている。いまや生成AIを使わないでは、ビジネスも日常生活も成り立たなくなってきたが、「GPT-4o」の登場は、それがさらに一段と進むことを示していた。
 ともかく、デモを見て驚いた。これまで数秒かかっていた回答が0.3秒に短縮され、まるで人間と話すようにスムースに会話できるようになったからだ。何気ない日常会話から、数学の問題をいっしょに解く、プログラミングをいっしょにつくる、要望どおりの図表を描く、複数言語間の翻訳をしてくれる——と、ほぼなんでもできる。
 つまり、このAIは、言語、画像、音声、動画を一括で処理できる能力があり、いずれ登場すると言われていた「汎用人工知能」(AGI:artificial general intelligence)ではないかと思えたのである。

「超知能」「シンギュラリティ」は目前に!

 AGIとは、ひと言でいえば、タスクを人間と同じかそれ以上にこなすことができる高次元のAIだ。
 従来のAIは、事前にプログラムされたアルゴリズムとデータに依存している。そのため、特定のタスクを処理することはできるが、人間のように広範囲にわたる知識と能力を持ち、自ら学習してさまざまなタスクをこなすことはできなかった。
 しかし、「GPT-4o」はデモを見る限りそれができる。
 AIは確実に、「特化型AI」(ANI:Artificial Narrow Intelligence)からAGIへと進歩を遂げている。
 ということは、本格的なAGIの登場は目前に迫ったと言っていい。そればかりか、「超知能」(ASI:Artificial Super intelligence)が登場するのも、2045年頃とされた「シンギュラリティ」(Technological Singularity:技術的特異点)が到来するのも、もっと早まったということになる。
 シンギュラリティが到来すると、AIはAI自身でより賢いAIをつくっていく。そうして、ASIは、人間の能力を超えて、自我意識、創造性、論理的思考などを持ってタスクに当たるようになる。テクノロジーは画期的に進歩し、人類はAIと共生していくことになる。
(つづく)

この続きは7月11日(木)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。 

※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。

 

山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。

→ニューヨークの最新ニュース一覧はこちら←

タグ :  ,