元同僚、30代の2人がクラフトジン蒸留所

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共同通信
北海道鷹栖町でジンの製造・販売に取り組む南亜太良さん(右)と大槻羽矢斗さん

 北海道鷹栖町に昨年誕生したクラフトジンの蒸留所が、町産ブルーベリーで香り付けした商品を今年4月に発売し、初回出荷約430本を完売するなど好評だ。ブランド名「RETROGRADE(レトログレイド)」は「逆行する」との意味があり、経営する南亜太良(あたら)さん(34)は「この酒と出会い気に入ってくれた人が、自分を再認識し立ち返るきっかけになれば」との思いを込める。(共同通信=星井智樹)

 ジンはジュニパーベリーという針葉樹の実で香り付けした蒸留酒。カクテルのベースとして使われるほか、ストレートやロックでも味わえる。

 横浜で生まれ、2歳ごろ鷹栖町に引っ越した南さん。大学院時代、米オレゴン州ポートランドのクラフトビール醸造所を現地調査するなどし「いつか酒に関わる事業をやりたい」と考えるようになった。

 札幌市の広告会社に就職後も酒造りへの関心は強まり、中でも原酒やボタニカルと呼ばれるハーブなどの組み合わせをさまざま選べ、自由度が高いと感じたジンに引かれていった。

 2021年に退社し、同僚だった大槻羽矢斗(はやと)さん(34)と会社「Son&Heir(サン・アンド・エア)」を設立。それぞれ蒸留器メーカーの研修に参加したりバーで働いたりして知見を深め、2023年に酒造免許を取得した。札幌国税局によると、ジン専門の蒸留所としては日本最北という。

 当初は思い描いた香りに仕上がらなかったが、ボタニカルの配合や原酒に漬ける時間、蒸留の温度調整など試行錯誤を重ねた。

 700ミリリットル入りで1本5500円。原酒は英国産を輸入しているが、将来的に地元で栽培された小麦から造りたいと考えている。現在、月約750本のジン製造量も少しずつ増やす計画で「アジアのトップバーに置いてもらいたい」と輸出を視野に入れている。

南亜太良さんらが製造・販売するジン「RETROGRADE」=北海道鷹栖町
南亜太良さんが経営する日本最北のジン専門蒸留所の設備=北海道鷹栖町