地球温暖化でワインが激変! 生産減、品質変化、産地移動、価格高騰 (上)

この記事の初出は2024年6月11日

 オレンジの不作でオレンジジュースの販売が中止になった。同じく、コーヒー豆の不作でスタバのコーヒーが値上がりしたなど、地球温暖化、気候変動の影響が日毎に拡大している。
 そんななかで、ワインも大きな影響を受けている。アルコール飲料、嗜好品であると同時に投資商品でもあるワインは、今後、どうなっていくのか?
 今回は、その動向をまとめてお伝えする。

中身が半分しか入っていないワインボトル

 ワインが地球温暖化、気候変動の影響を受け、生産が減少したり、値段が高騰したり、また、産地が移動してしまったりすることが、近年、顕著になってきた。
 ただ、これはワイン生産者、流通業者、販売業者、ワイン投資家にとっては大問題だが、私のような、手頃な価格のワインを嗜む程度の人間にとっては、それほどの問題ではない。
 —–と思っていたが、ある動画を見てから、これはただ事ではないと思うようになった。
 その衝撃的な動画というのは、オーストラリアのワイナリー「Ampersand Estate」(アンパサンド・エステート)がYouTubeにアップした「Tomorrow’s Vintage」(明日の年代物)だ。
https://www.youtube.com/watch?v=Y5EZkphjXlM
 この動画には、中身(ワイン)がフルに入っていないボトルが3本登場する。1本目は2040年、2本目は2080年、3本目は2100年という「未来のボトル」で、なんと2100年のボトルには中身が半分以下しか入っていない。

シラーズのワインが年々、減少していく

 3本のボトルが表しているのは、今後、温暖化が進んでワインの生産量が減っていくと、どうなるかである。2023年時点でのブドウの収穫地を100%とし、それぞれの年に残る収穫地の割合をワインの量で表すと、2040年には86%、2080年には56%、そして2100年には、わずか44%になってしまうというのである。
 ワインにできるブドウの品種はいくつもあるが、この動画で示されているのは黒ブドウの「Shiraz」(シラーズ)。オーストラリアはシラーズのワインの生産が盛んで、私が買うワインのほとんどはシラーズのフルボディ。
 濃厚でスパイシー、そしてほのかな甘み。これがたまらない。ちなみに、私がよく買うのは、ローソンで1000円で売っている「Westend The Black Shiraz(ウェストエンド ザ・ブラック・シラーズ)で、オーストラリア、ニュー・サウス・ウェールズ州の生産。動画をつくったワイナリー「Ampersand Estate」も地区は違うがニュー・サウス・ウェールズ州にある。
 「Ampersand Estate」では、公式サイトで「私たちが愛するワインは20年後、30年後も、変わらずに私たちの世界に存在するだろうか?」と警鐘を鳴らし、「身近なところから、温暖化に対するアクションを始めよう」と、呼びかけている。
(つづく)

この続きは7月16日(火)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。 

※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。

 

山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。

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