前向きに、柔軟に 中三年 高橋陸人
ニュージャージー日本人学校
僕は父の仕事の都合で、昨年の12月に日本からアメリカに引っ越すことになった。それまで日本での生活が当たり前だった僕は、どうしても父の転勤、つまりアメリカへの引っ越しを受け入れることができず、渡米前はとてもネガティブな感情をもっていた。しかし、まだ14歳だった僕にとって、「家族で渡米する」という選択肢以外あるわけもなく、予定通り12月に家族でアメリカに引っ越した。
僕がまず不安だったことは言葉の壁だった。日本で生活していた時は、授業で英語の学習をしていたものの、実際に自分が英語を話したり聞き取ったりすることをまったく想定せずに勉強していた。今後の受験のために英語を勉強していたようなもので、それ以外に英語を身に付ける必要性や、使いこなすことができるようになる自分を想像すらしていなかった。英語は嫌いというわけではなかったが、当時の僕はとにかく英語という言語に対して何の感情ももっていなかった。
日本では、簡単な英語でも外国人に話しかけられると戸惑ってしまう日本人は、僕を含め少なくないと思う。一方で、アメリカに来てみると、英語を母語としない様々な人種の人達が英語でコミュニケーションをとっている。そんな人達を見て、純粋に「かっこいい」と思った。このようなことがきっかけで、「アメリカにいるうちに、僕も英語をしっかり勉強して話せるようになりたい」という思いが強くなり、英語学習に対してのモチベーションが上がった。
英語に対する思いが変化した理由は、それだけではない。ニュージャージー日本人学校で、英語と日本語を完璧に使いこなすバイリンガルのクラスメイトと出会ったことも、これまでで初めての経験だった。彼のように英語を使いこなせるようになることで、将来の選択肢が広がるということにも気付いた。このようにして、僕の英語に対する考え方は、アメリカに来てからそれほど時間が経過しないうちに大きく変わったのだ。
さらに渡米するにあたり、不安だったことがもう一つある。それは、環境を変えることだった。当時、それなりに満足していた日本での環境を変えたくなかった。しかし、今考えてみると、当時の僕の視野はとても狭かったと思う。ニュージャージー日本人学校には、アメリカで育った友人や、アメリカ以外の国で暮らした経験のある友人などが多くいる。様々なバックグラウンドや多様な考えをもった小学校1年生から中学校三年生までの児童生徒が集まり、お互いを尊重し合っている。誰もが意見を言いやすい雰囲気で、間違えても否定されたり非難されたりすることもまったくない環境である。今の僕は、この環境をとても居心地良く感じている。環境を変えることが怖く、頑なに拒んでいた僕だったが、アメリカに来てから様々な考えがあることを知り、自分自身の視野や考え方を大きく広げることができた。受験や親の転勤で僕自身の環境の変化は今後もあると思うが、どんな状況にあっても前向きな考えをもち、柔軟に対応していきたいと思っている。(記事、写真提供:ニュージャージー日本人学校)