地球温暖化でワインが激変! 生産減、品質変化、産地移動、価格高騰 (完)

この記事の初出は2024年6月11日

ワイン価格、この3年で3.5倍も上昇

 気候変動による生産量の減少、ヴィンテージものの希少化から、年々、ワイン価格は上昇している。
 「THE NIKKEI MAGAZINE」の記事(4月24日)によると、東急百貨店が運営するワインショップ「THE WINE by TOKYU DEPARTMENT STORE」(ザ・ワイン バイ・トーキュー・デパートメントストア)が販売するブルゴーニュのヴィンテージの高級ワインの価格はみな上がっているという。
 たとえば、ブルゴーニュ(英語ではバーガンディ)を代表する白ワインの「ドメーヌ・ルフレーヴ シュヴァリエ・モンラッシェ」は、2018年のヴィンテージが1本9万5000円だったが、2019年は16万円、2020年は25万円、そして最新の2021年は33万円(いずれも税別価格)と、わずか3年で価格が3.5倍になったという。
 また、赤ワインの「アルマン・ルソー・シャンベルタン」も、2014年ヴィンテージまでは1万円未満だったが、2015年から高騰し始め、最新の2020年は38万円の値がついているという。
 これはなにも、ヴィンテージの高級ワインに限った話ではない。一般のワイン、テーブルワインもみな値上がりしている。日本の場合、円安の影響も大きいが、それ以上に温暖化の影響が大きい。
 日本のワインメーカー「メルシャン」は、6月1日、ワイン全商品の4割に当たる約130品目を7月に値上げすると発表した。

投資商品としてワインと投資家の動向

 ワインは飲料、嗜好品であると同時に投資商品である。 とくに富裕層にとっては、歴史と伝統に支えられた資産運用手段だ。ワインは、一般の金融商品と違って、リーマンショックやコロナショックのような金融資産の暴落時には、リスクヘッジを果たすので、人気は高い。
 それに、投資家というのは、気候変動が激化しようと、戦争が起ころうと、大災害が起ころうと、ともかく資産を増やそうという「悲しいサガ」を持っている。
 よって、ワインの値上がりは止まらない。温暖化が進めば進むほど値上がりし、投資家はさらに買い求める。
 ロンドン国際ワイン取引所「Liv-ex」が公表しているデータによると、直近10年〜30年の統計から、ファインワイン(熟成された良品質のワイン)の国際投資市場は毎年約13%のペースで成長しているという。
 最近では、投資信託と同じ仕組みでワインに投資する「ワインファンド」もあり、人気を呼んでいる。また、スマホ時代にふさわしく、アプリを通してワインに投資することもできるようになった。

今後は北で生産されるワインが人気になる

 では今後、ワインがどうなっていくのか?
 投資という面も含めて考えると、産地の北上(北半球)、南下(南半球)にしたがって、それらの地域のワインが人気になると考えられる。すでに、そうなっているワインもある。
 たとえば、北半球では、アメリカ北部のオレゴン州。オレゴンのピノ・ノワールやシャルドネは、近年、人気上昇中である。欧州では、ドイツ南部のファルツやバーデンなどでのワインが人気を得ている。南半球では、南アフリカ南端のウォーカー・ベイ、オーストラリア南部のビクトリア州生産のワインが人気を集めている。
 ワインはほぼ世界中で造られ、原料となるブドウの品種も1000種類以上あるという。そんなワインの魅力はなにかといえば、それは多様性だろう。その味わいは、それぞれみな違うということが、これまでのワイン人気を支えてきたと言える。
 となれると、温暖化は、その多様性を増すことになるかもしれない。ただし、それも限度の問題で、これ以上の気候変動が進めば、ワインそのものが減っていってしまうだろう。それは投資家にとってはいいことかもしれないが、私のような一般のワインドリンカーにとっては、悲しいことである。
(了)

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山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。

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