この記事の初出は2024年6月11日
デンマークもIDナンバーでなんでもできる
世界幸福度ランキング第2位のデンマークは、フィンランド以上のデジタルガバメントである。デンマークは、国連経済社会局(UNDESA)が世界各国のデジタル化進捗状況を2年おきにまとめる「デジタル政府調査」のランキング(2022年度)で3回連続の1位になっている。
デンマークのマイナンバーは、「CPRナンバー」(Central Persons Resistration)と呼ばれるもので、徴税の効率化を目的として1968年に導入された。かつて、日本では「国民総背番号」が議論され、反対の声が大きく頓挫したが、デンマークではすんなり導入された。
デンマーク国民は、10桁のCPRナンバーを持ち、デジタル時代の到来ともに、氏名、性別、生年月日、住所などから、いまでは所得、家族構成などほとんどの個人情報が紐づけられている。
デンマークには、「Borger.dk」という公共ウェブポータルサービスがある。ここにCPRナンバーでアクセスすることで、税金、年金、医療、求人、引っ越し、旅行など、あらゆる公共サービスを受けることができる。
「Borger.dk」のBorgerはデンマーク語で「市民」のことで、「Borger.dk」はまさに市民のためのポータルサイトである。
国民の満足度が高い世界1位のデジタル政府
デンマークでは、デジタルであらゆる公共サービスを受けられるので、役所に行く必要はまったくない。フィンランドと同じだ。
そのため、国民の「Borger.dk」に対する満足度は非常に高い。政府自らの調査では、Borger.dkの利用者の91%は「非常に満足」または「満足」と回答している。
全国民がこのようなデジタルによるサービスを受けられる背景には、当然だが、ネット環境の普及度の高さがある。2020年の政府の調査では、自宅でネットを利用できる家庭は97%、国民の96%がスマホを、91%がPCを所有している。
このデンマークのデジタルガバメントを、デジタル後進国の日本は視察団まで送って学ぼうとしてきた。そうして日本版DX(デジタルトランスフォーメーション)を進めてきたが、いまだにうまく行っていない。
その理由は、意識不足、IT人材不足、縦割り行政、継ぎはぎシステムなど種々あるが、「自分のことを他人に知られたくない」という意識が強すぎるのではないかと私は思っている。先に書いたように、日本人は人いちばい嫉妬深いと思う。
前記したデンマークが1位の「世界電子政府ランキング」では、2位がフィンランド、3位が韓国、4位がニュージーランド、5位がスウェーデンで、日本は14位である。
この続きは7月25日(木)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。
※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。
山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。