本郷弁護士の遺産計画TIPS
第6回 口座の受取人は遺産の受け取りを放棄することができるのか?
こんにちは、弁護士の本郷友香です。このコラムを通じて、遺産計画や遺産相続についてのトピックスをお伝えしています。今回は米国市民でない非居住者の、米国内に所有する資産にかかわる「遺産税申告書の提出」について解説します。
弁護士 本郷友香
ハワイ州、カリフォルニア州、ワシントンD.C.およびニューヨーク州の弁護士資格を有し、遺産相続分野で活躍する。ニューヨーク、ホノルルに事務所を構える。2022〜2024年、Expertise.comのプロベート分野にて、ホノルルのベスト弁護士に選任。2023年、Elite Lawyersよりハワイの遺産相続の分野でエリート弁護士に選任される。日英両語共に堪能。
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はじめに
米国の居住者も非居住者も、米国の金融機関にて、証券口座や退職金口座等を含む金融口座を所有していることが多々あります。この様な口座に受取人を指定しておくことは、金融機関の方で所有者が死亡した場合に、金融機関が口座の資金を誰に受け渡すことを事前に知ることを可能にするため、プロベートを回避することに役立ちます。ただし、受取人が口座のお金の受け取りを放棄しなければならない必要性が生じる場合もあります。
IRS(内国歳入庁)の受取人の放棄に関するルール
IRSの第2518条において、受取人は、1)放棄事項が書面により、2)金融機関が書面による放棄事項を口座所有者の死後、9カ月以内に受け取る、または受取人が21歳に達した日から9カ月以内に書かれた放棄事項を受け取る場合において、口座の全部、または部分的な受け取りの放棄をすることができます。 受取人が21歳以上であった場合、受取人が口座のお金の受け取りを放棄したい場合、口座所有者の死後の9カ月以内に、書面による放棄事項を金融機関に提出する必要があります。
受取人の放棄権利がどのように役立つのか
受取人の放棄権利は、例えば受取人が日本の居住者であり、高齢で死に近づいている場合等に役立つことがあります。その受取人が亡くなった場合、遺族は相続税を日本で支払うことになります。亡くなった受取人の財産を引き継いだ遺族が次に死亡しますと、再び相続税が発生し、相続税の二重課税が発生します。元々の受取人が口座所有者の死後、9カ月以内に資産を放棄することができれば、上記の例と反し、故人の遺族は相続税の二重課税を回避することができます。
まとめ
ご家族の死亡時に発生する可能性のある税務上の影響等に備え、受取人の放棄権利に関する9カ月のルールを知っておくことは良いことです。
当コラムは情報提供のみを目的としており、法的助言を提供することを意図しておりません。個別の案件については、弁護士・税理士の助言を求めてください。
本郷法律事務所
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